三種類のコンタクト


「コンタクト」の そもそもの意味は、
「出会い、触れ合い、接触」で、
一般的に日本では「ヒット」ということが多いが、
ヒット曲、ヒット商品、あるいは、野球のヒットのように、
魚を釣ることに関しては、どうも意味合いが違うようだ。
ということで、当サイトでは、敢えて、
「コンタクト」という言葉を使っている。
AUやNZでは、魚が掛かった時に、
「コンタクト!」と言うのが普通である。

逃した魚は大きい。
と、昔から言われてきた。
せっかく掛かったのに、仕掛けのトラブルにより、
ばらしてしまうと、姿を見ていないだけに、
さぞかし、大物だったことだろうと、悔しい思いをする。

しかし、釣りのデータとしての価値は、
無事に玉網入れしたものとほとんど変わらない。
感情を取り除いて考えれば、
逃がしたとしても、コンタクトとほぼ同じである。
それを、「ニアコンタクト」と呼ぶ。
ランドオンした場合が、通常の「コンタクト」であり、
他のコンタクトと特に区別する場合、
「リアルコンタクト」と呼ぶこともある。

釣り人には意地があるので、
ニアコンタクトは、釣りデータに入れたくないというのが、
ごく普通のことではあるが、
私のように、大量のニアコンタクトを経験していると、
ニアもコンタクトとして記録に付け加えた方が、
より現実的で実証的なデータになると考えている。
ただし、「実釣データ」としては、扱わない。

ニアコンタクトには二種類がある。

1.仕掛けのブレイクによるもの。
2.魚の首振りなどによって生じる自然なすっぽ抜けによるもの。

二つの間には、かなりの相違性がある。
1.は、単に釣り人の側の問題で、
ブレイクしなければ、リアルコンタクトになっていたはずである。
2.は、鈎掛かりが甘い時に、よくある。
魚の捕食意欲にも大小あって、
意欲が小さければタイラバへのアタックが弱く、
鈎が貫通しなかったり、深く食い入らなかったりする。
鈎が鱗に掛かっていて、その鱗が取れることもある。
また、魚の顔面の硬い部分に鈎が刺さっていたりすると、
一時的には鈎掛かりするのだが、
しばらくして、その鈎は外れてしまう。
それらは、まさしく、ニアコンタクトと言えるだろう。

更に、留意すべきは、
三つ目のコンタクトである。
それは、魚信だけあった。
あるいは、アタリがあった。
というような場合には、「プレコンタクト」と呼ぶ。
この場合は、「ニア」や「リアル」とは差がある。
触っただけという場合も多いだろうから、
「タッチコンタクト」と言っても良いだろう。

プレコンタクトになると、かなり複雑だ。
ネクタイを咥えて引っ張ることは多いだろう。
ぐっ。という魚信がある。
ぐっ、ぐっ、ぐぐっ。としばらく追いかけて来ることもある。
この場合は、補色スイッチが入ってもおかしくない状態だが、
すんでのところで、疑似餌だと気が付き、去っていく。
補色スイッチが入っていれば、
鈎掛かりして、リアルコンタクトになる。

ネクタイを咥えるより強いアタリがあっても、
鈎掛かりしないことがある。
あれっ?と思い、仕掛けを回収してみると、
鯛玉のホログラムシールがめくれていたり、
至る所に鋭く削ったような歯形が付いていたりいる。
マダイが鯛玉にがぶりと嚙みついたことに気が付く。

この場合は、捕食スイッチは入っているのだが、
鉛という、硬くて有害な物質に驚いて、
一目散に逃げて行ってしまい、後が続かない。
がつん。で終わりという、
割と多いプレコンタクトのパターンである。

高活性の場合、レベルの高い捕食スイッチが入り、
タイラバを咥えて反転する。
鈎は、マダイの口周りに食い込み、
しばしば貫通するので、リアルコンタクトになる。

しかし、通常は、警戒心が強いマダイである。
したがって、興味スイッチのみで、
仕掛けに近づき、食えるエサであるかどうかを確かめる。
その時に、生じる現象が、アタリ、あるいは魚信を、
コンタクトの前段階なので、プレコンタクトと呼んでいる。

極めて活性が低い場合は、
プレコンタクトすら起こることはない。
タイラバが魚の近くを通っても無視を決め込む。
無視というより、目に入っていないのだろう。
せいぜい、海中のゴミ程度にしか見えていない。

ところが、潮が動き、湧昇流が発生したりすると、
にわかに魚たちはざわめき立ち、
興味スイッチが入って、プレコンタクトを始めようとするだろう。
それが、いつ、どこで起こるかは分からない。
まったく反応が無くても、
丹念にリトリーブを続けていれば、
必ずと言ってよいほど、変化がある。
それを逃さず、集中力を高めていれば、
いつコンタクトが来ても、慌てることはないだろう。

数多くの出船を重ねている内に、
三種類のコンタクトを通して、
鯛ラバの面白さが深まったような気がしている。

もちろん、できれば、コンタクトして、
玉網にマダイが入ることがもっともいいのだが、
本命ボウズであったとしても、
ニアコンタクトやプレコンタクトがあれば、
何だか、釣りをしたような。
満足とは言えないが、ある程度の充実感はある。
マダイとのコンタクト(接触)を感じているからだろう。



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