2月6日

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ベタ凪を期待していたが、
予報より波とうねりが高かった。
しばらく港近くで竿を振ることにした。
その一投目の20巻きを三度続けた時だった。
潮ボケが早く、もうすでにラインは100m近く出ていた。
水深は70数mと、深場だった。

いきなりガツッときて、すぐに、釣果音がした。
キュイーーーーーン。
中型くらいだと思ったが、潮の抵抗と相まって、
想定外に、引きが強く感じられた。
おっ、おっ、いいぞ!
巨エソではないと確信した。
もう一度、キュイーーーーーン。
ごり巻きだと、時間が掛かりそうだ。

指ブレーキ&ポンピングで魚を浮かせた。
指にスプールを当て、竿を煽った分だけ素早く糸を巻く。
注意すべきは、決して糸をたわませないということだ。
がっちり掛かっているように感じても、
ゆるんだ瞬間、ふっと鈎が外れることもある。

やがて、船から20m向こうに、
白く見える魚体がぽっかりと浮かんできた。
よし、やった!魚は、玉網に収まった。



美しいオスの良型だった。
体高があって、どっしりしていた。
このタイプの本命がもっとも力強いのだ。

出港から30分もしないうちのコンタクトに、
うれしい驚きを隠せない船長だった。
こういうことはたまにあるが、
たいてい後が続かないという島の海のジンクスがある。
特に、厳寒期には多い。
朝いちばんでコンタクトして、それでお仕舞い。
ということが、過去に何度あったことか・・・。

ジンクスは、ぴたりと当たってしまった。
それから、丸々4時間という長丁場だった。
魚がどこかへ消えたのではないかと思うくらいだった。

2時間もアタリが無いと、うんざりだというのに、
4時間というのはまさに異常としか言いようがない。
厳寒期にはよくある話で、ぐちっても仕方ない。
と、船長は、自分に言い聞かせるのだった。
だが、ふーっという、ため息は何度も出る。
焦燥感によるストレスを解消しようとしていたのだろうか。
それとも、気を紛らわしていたのか。

幸いだったのは、風はすっかりとれて、
穏やかな凪となったことであった。


(中編へ続く)




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