凪。無風。やや霧。心配するほどではなかったが、 周りの船はほとんど見えない。 不気味な雰囲気が漂っていた。
今にも大蛇がダバッと目の前に現れそうな・・・。
籠網船の爆音が聞こえていた。
このところ、毎日のようにこの船が漁をしている。 普通、籠を仕掛けてしばらくは引き上げないと思うのだが、
それだけよく獲物が入っているということだろう。
エンジン音には敏感なマダイは、 音が大きいとまず釣れない。
できるだけ遠ざかるようにしようとしたが、 霧の為に、難儀した。 GPSを頼りに、あちこちと移動。
どこもかしこも、1.1kmで船は動いていた。 流れはいいのだが、ラインはバーチカル。
活性も低いようで、プレコンタクトが三度あったが、 鈎に乗るずっと手前でタイラバの元を去っていくのだ。 これでは釣れるわけがない。
オールリリースデーなので、釣果は必要ない。 本命が一尾、コンタクトすればじゅうぶんだ。 だが、二時間が過ぎてもアタリは無かった。
実は、こういう条件が良いのに食わないという状況は、 鯛ラバの実釣研修としては最適なのだ。 食わない時にこそ、勘が研ぎ澄まされ、
魚との、ほんのわずかな接触が、 めきめきと技量を高める。
同じような流れが続いていると、 条件が好いように見えて、食わない。
プレコンタクトばかりなのだが、 潮の変化が生じると、リアルコンタクトの可能性が、 ぐぐっと上がるのである。
定速的な流れのあとに、必ずといってよいほど、潮が動く。 それを期待している時間も、鯛ラバの面白さである。
釣れればいいというものではなく、
釣れるに至る過程を愉しむことで、 鯛ラバでしか味わえない妙味がある。 釣れなくても、ずっとリトリーブを続けていなければ、
この感覚は分からない。
満潮から下げに入っていたので、
そろそろ動く時間帯だろうと思っていると、 動いた! 1.1kmから1.8kmに変化したのだ。 満を持していたかのように、
ぐいっ、ぐいっ、ゴン。コンタクト! ギュイーーーーーン。 大ダイにちがいないと思った。 中層を過ぎるまで、ぐいん、ぐいーんと、
重量感を伝えて来た。 ごり巻きではほとんど上がらなかったので、 大ダイであることを確信した。 指ブレーキ&ポンピング。
海面近くになってようやく、引きが無くなり、 「向こうでポッカリ」が起こった。
デッキに横たえると、 「精も根も尽き果てちゃったよー。」 と言わんばかりの顔に見えた。
オスの大ダイだった。
リリースする予定だったが、 まるでチダイのように、口から内臓が派手に出ていて、 残念ながら再起不能だった。
大ダイがこのようになるのは、初めて見た。 オスでよかったと思った。 島の友人にプレゼントすることにしよう。
今回も、潮の変わり目でコンタクトがあった。 大ダイを狙うなら、変化の大きい時間帯を釣ろう。 干満潮前後がいいのは言うまでもないが、
特に好いのは、満潮後である。
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