風は弱くベタ凪だった。 嫌な予感はしたが、潮流れがずっと続いていた。
適度に船は流れているので、 これは、いいぞと思っていると、
すぐにアタリがあって、 キロサイズの本命がコンタクトした。
ニックネームは、「ジャッキー」にしよう。 ジャスト・キロということで。
「ジャッキーロ」でもよいが、それではイタリア魚のようだ。
このジャッキーのあとは、さっぱりで、
他魚はよく掛かってくれたが、 本命は、長い間コンタクトすることはなかった。
いわゆる、「好条件シンドローム」といい、
条件がとても好いにもかかわらず、 プレコンタクトばかりで、魚に勢いがない。 ぐぐっと来ては、タイラバから遠ざかる。
そういうことばかりだった。
先ほどのジャッキーでは、糸が出なかったので、 なんだか物足りない。 釣果音を聴きたいものだと粘りに粘り、
いつの間にか、五時間という長丁場になっていた。 ベタ凪なので、体力の消耗が少ないのは幸いだった。 船は揺れる程、足腰の筋肉が疲労する。
体幹は鍛えられてよいのだが。
満潮が正午過ぎなので、
その直後が勝負だと思っていた。
ようやく、その時が訪れた。 1.1kmの船流速度が1.4kmと、やや速くなった。
満潮直後の潮が動いたのだった。
25巻きしてからのフォールの最中に、 急にスプールの回転が速くなった。 すかさず、速巻きをすると、魚は、鈎に乗った。
フォールでコンタクトしても合わせる必要はない。
ギュイーーーン。ギュイーーーン。 いい釣果音を奏でながら、 思いっきり糸を出していった。 最初はまるでヒラマサのようなファイトであった。
力強い引きはしばらく続いたが、 キュイーーン。と力が弱まりつつ、 重量感のみが伝わってくるようになった。
上層付近で、糸が斜めになり、 向こうでポッカリがあった。
実に美しいメスの準大ダイだった。
大物は、特に満潮前後にやって来る。
体長は68cm。 パールピンクの魚体が初夏の日差しに照らされていた。 ちょっと手間取ったが、無事、リリースすることができた。
思いもよらず、長い釣行となってしまったが故に、 よろこびもひとしおだった。
これにて、納竿!
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