五月はもうすでに七日間連続。 こうも凪が続くのは珍しい。 釣りはもはや仕事のようになっているが、 こんな仕事ならば、
オーバーワークも厭わないはずではあるが、 漁師と主夫とシェフそして、 種々のメンテナンス業務や家事労働、 及び、I
T作業などを一人でこなしていると、 そのしわ寄せは、 漁や釣りの時間短縮に向かわざるを得ない。 これは、結構つらい。
本日は漁にての出港なので、 オスの良型が一尾釣れればそれでいい。 白子もまだまだ旨いだろうし、
早い内に手に入れて帰港しようと考えていた。
だが、その考えは甘かった。 前回に引き続き、船流速度が0.0kmのままで推移した。
たまに、0.7になったり、0.9になったり。 最大で、1.1kmにしかならない。 動いたり止まったりと目まぐるしい。
このように流れが安定しない日は、 釣果が芳しくあろうはずがない。 されど、今日は、鯛ラバ漁師なのだ。 ボウズで帰るわけにはいかないだろう。
低条件であっても、 オスの切り身サイズ一尾も釣れないようでは、 島の漁師の名がすたる。 などと、いつになく気合いを入れて、 リトリーブを続けた。
しかし、二時間経っても0.0kmのまま。 やっぱり、漁師という名は返上しようかなあ。 と、弱気になった。
仕掛けは釣三丸スタンダードで、 これは、変更のしようがない。 ポイントもいいところを流れていた。 あとは、船がわずかでも安定的に流れてくれることを祈った。
この時点で、プレコンタクトは5回。 ニアコンタクトは2回あったが、鈎に乗らない。 食い渋りというより、
興味スイッチからその先へ進んでいかないのだ。 鈎掛かりには、捕食しようという意欲から出る、 魚の勢いが必要である。
予定の三時間に近くなった。 加工作業を考えるともうそろそろ限界だなあ。
と、今までにない強いアタリがあった。 がっ、がっ、がつん!ぐい、ぐい。キュイーーン。 よし、コンタクトだ。キュイーーン。
おっと、これは予定の良型くらいありそうだぞ。 キュイーーン。
しかし、この引きの強さは、メスではないだろうか。
とやや不安に思ったが、それならそれで構わない。 とにかく、本命一尾がだいじ。
中層を超えてようやく引きが弱まった。 そして、黒っぽい魚体が浮かんだ。 良型に近いオスだった。
体長は56cm。腹がぱんぱんで、
いかにも白子が満タンな様子だった。 色黒のオスは、味もいい。
これにて終漁。
思っていた通り、うまそうな白子が入っていた。
実にうつくしい。 そればかりではない。激ウマなのだ。
この実例でも分かるように、まだまだ産卵は続いている。 というか、このマダイの産卵期はこれからだったのだ。
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