1月3日

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常連としては、最長の距離をはるばるやってくる、
ゲストを迎えての釣りとなった。
島の海と魚をこよなく愛する人である。
車で六時間も掛かるので、
満足のいく釣りをしてもらわない訳にはいかない。

沖のノンエソ地帯(巨エソのいないエリア)へ向かう。
ゲストは、まだヒラマサを釣り上げたことがない。
その願いを初釣りで叶えられたら、・・・。

だが、その沖は、風波と潮波がぶつかって、
大変危険な状態だった。
仕方なく、潮波が無いポイントでしばらく待つ。

大ダイポイントへ向かっていい流れが発生していた。
実は、ちょうど一年前、ゲストが、
大ダイを二尾釣り上げたポイントだったので、
期待大。

さっそくアタリがあった。
ギュイーーーン。ギュイーーーン。
ふっ。
単純な鈎外れだった。
残念無念。

その後、キュイーーン。もあったが、ふっ。
なんだ、またかと意気消沈。
船長にも二、三度、ガツンがあったが、
鈎に乗ることはなかった。
鯛玉にはマダイの歯形が数か所あった。

ここでは、結局、良型イトヨリダイ一尾と、
良型の アオナが二尾ヒットしたのみだった。

だが、今日の勝負は満潮から下げに入る、
正午過ぎからだと見ていた。
風波が収まってきたので、再び、ノンエソ地帯へ戻った。

「アタリがありませんねえ。」
「なあに、これからだよ。」
そのような会話をしていると、・・・。

ギュイーーーン。ギュイーーーン。ギュイーーーン。
激しい糸出し音がゲストから聴こえた。
ギュイーーーン。ギュイーーーン。

うわっ、ヒラマサだ!
船長は、全力で糸を巻き取り、エンジンを掛けた。
「巻いて、巻いて、巻いて。」
「手を止めたら駄目。」

そう言いながら、糸の出て行く方向へ船を走らせた。
よし、瀬を切った。と思った。
普通なら、もうすでに、瀬切れしているはずだ。

ラインを見ながら、前進したり、バックしたり。
「よし、大丈夫だ。巻き続けて。」
「そうそう、糸が出ても構わず巻いて。」

「獲れるよ。獲れるよ。」
徐々にヒラマサは、浮き上がっていた。
よし、これで、獲れたなと感じた。

しかし、それからフィニッシュまでが長い。
「ラインを見て、船縁にラインが当らないように。」
「右行って、右。」
「あっ、左、左。そうそう、そのまま。」
「次は、ポンピング。巻き取って。」
「そうそう、竿を煽った分素早く巻いて。」

・・・。

激闘十八分。
長い長いやり取りだった。
ついに、ヒラマサは観念したように、
玉網に収まったのだった。



体長88cm。丸々太ったヒラマサだった。
ずっしりと重かった。

ここは、瀬が荒い。
船長も、何度もラインブレイクの目に会っていた。
二人のチームプレーが功を奏したのだ。
いやあ、ほんとうによかった!

しばらくして、今度は、ヒラゴを釣り上げた。
リーダーは新しく換えられていた。



この、細長い体型は、回遊性のヒラマサだ。
体長は68cm。今度は、楽勝だったと思う。

そのあと、しばらくして、
「本命が来ませんね。」
と言っていたゲストは、何と、
その本命まで釣り上げてしまった。



58cmの準良型だった。
いやはや、午後からが勝負だとは思っていたものの、
まさにその通りになって、我ながら驚いた。

ヒラマサ、ヒラゴ、準良型の本命が、
立て続けにヒットした。

こうして、ゲストの初釣りは、成功裏の内に、
めでたく幕を下ろしたのである。

それにしても、初釣りで、
初ヒラマサというのは、滅多にあることではない。
島の海と魚への愛は、いっそう深まったにちがいない。

ほんとうに、おめでとう!


<追記>

ゲストの好釣果は、
釣三丸スタンダードに尽きるだろう。
彼は、手先がたいへん器用で、
完全コピーに成功していた。
鯛玉とフックセットに至っては、
船長以上の出来栄えで、
釣り具店に並ぶ商品と比べても、
勝るとも劣らないほど、完成度は高かった。
これで釣れぬはずはないと感じていた。



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