ショックアブソーバー


ショックアブソーバーを訳すると、「衝撃吸収材」。
大ダイは、最初のひと走りが強烈で、まさに衝撃的である。
そのパワーをうまく吸収できなければ、
もっとも弱い部分がブレイクする。
それは、鈎であったり、リーダーであったり、結び目であったり、
あるいは、ラインの傷ついた部分であったりする。
釣三丸釣法では、鈎であることが多い。
もっとも先端にある鈎がいちばんに衝撃を受ける。
その鈎が、チヌ鈎の5号という、
弱々しい鈎なので、当然と言えば当然なのだが、
「釣ってなんぼ」より先に、
「掛かってなんぼ」を重視しているが故のことである。
掛からなければ、その後が無い。

まずは、リーダー。
リーダーは、PEラインの欠点を補う。
ラインには色があり、
マダイにはそれがよく見えるようだ。
インクラインで、60°から45°ほど角度が付くと、
死角になり、食いが良くなる。

リーダーは透明なので、ラインよりは見えにくい。
もう一つの欠点は、ラインは伸びないということ。
それは、欠点というより長所と言うべきだが、
伸びないと、切れやすい。
強烈な引きがあれば、0.8号ラインなど、
風の前の塵の如しで、吹っ飛んでしまう。

だから、伸びの良いリーダーを使う。
すぐに伸びてくれなければあまり意味がない。
したがって、ナイロン素材ということになるだろう。
ナイロンとフロロカーボンとでは、
最終的な伸び率は同じだが、
ナイロンの方が素早く伸びるので、
最初の強烈な衝撃を吸収する。

ナイロンリーダーは、衝撃吸収材として、
決定的な役割を果たしているので、
リーダーは毎回取り換える消耗品と考えて欲しい。
一回で5〜6mとするのが良い。
太さは、4号がベスト。
PE0.8号とのバランスが最もよく取れている。

水分を吸収して強度が下がるので、
高価なリーダーを使っていたとしても、
必ず取り換えるのが賢明だ。
一度でも海水に浸かったら替えよう。

また、一尾釣ったら、必ず指の腹でなぞり、
ざらつきを確かめるようにしたい。
少しでも違和感があったら、
その部分から下はカットして、仕掛けを結び直す。
それを怠ると大物が来た時に痛い目に会う。

ラインとリーダーの結合は、FGノットにする。
編み込みは三十回前後。
鯛ラバの場合は、ハーフヒッチはしなくていい。
しなくても、トラブルは一度もなかったので、大丈夫。
まずは、リーダーが衝撃吸収の重要な役割を果たす。
それを知っているか、知らないかで、
大物の捕獲率は明らかに変わる。

次は、リールのドラグである。
これが無いと、まず、大ダイは獲れない。
安価なリールは大抵ドラグ機能が劣っている。
鯛ラバ初心者は、得てして、
とりあえず一万円程度のリールで済まそうとするだろうが、
それは、大きな間違いで、
レンタルでもいいので、高品質のリールを使おう。
出るべき時に、適度の量の糸が出なければ、
ほとんどの場合、ブレイクするだろう。
高級であればあるほどいいと思うが、
最低でも実売価格二万円以上のリールは使いたい。

ドラグ性能が良いリールを使えば、
リトリーブの時と同じようにハンドルを回していれば、
大ダイもいつかは力尽きて、海面に浮かぶ。
大切なことは、回す手を止めないということ。
ラインが出されている時も巻き続ける。
ドラグの良いリールは、それがスムースにできる。

ドラグの締め具合が重要である。
私の経験からすると、
50cmを超える本命が掛かった時に、
わずかに糸が出される程度が最適である。
それ以下だと、糸が出過ぎるし、
それ以上だと、どこかがブレイクする。
適切なテンションなら、
指ブレーキを掛けずに、大ダイでも浮いて来る。
ただし、締め具合は経験が要るので、
慣れないうちは、大ダイの実績が豊富な人に調節してもらおう。

例外は青物。
たとえば、80cmを超えるヒラマサでは、
50cmマダイとは、パワーがまるで違うので、
糸を引き出す長さも回数もずっと多い。
指ブレーキを掛けなければ、いつまでも上がって来ない。
そのようなヒラマサが掛かったら、
余程の幸運がないとネットインにこぎつけるのは難しい。

最後は、ロッド。
リーダーやドラグほど重要ではないが、
竿のしなりが衝撃のパワーを、
かなり吸収しているのは間違いない。

大ダイは中層を過ぎる頃には、
かなりパワーが弱っているのだが、
それでも、逃れようと必死である。
首を振りながら、鈎を外そうとする。
その時に、竿がしなり、相手に抵抗を加えることによって、
それ以上、糸が出ないようにしている。
竿の反発力なのだが、
品質の良いロッドは、きれいな弧を描く。
竿全体で、マダイの引く力を吸収しているのである。
穂先が柔らかく、バッドがしっかりしているロッドがいい。
ロッドは、リールほど価格にこだわる必要はないが、
折れやすい穂先の竿と、
バッドまでやわやわな竿だけは避けた方が賢明だ。

リーダーと、ドラグ、そして、ロッド。
これらが、バランス良く衝撃を吸収している。
5号のチヌ鈎と4号リーダーという、
考えられないような細い仕掛けで、
90cmオーバーの大ダイや、
ヒラマサさえも獲ることができるのは、
これらのショックアブソーバーが連携し合って、
彼らのパワーを見事に吸収してからに他ならない。

細仕掛けでしか味わえない、緊張感。
そして、大物を釣り上げた時の達成感。
鯛ラバという釣りだから、
たっぷりと味わえるのではないだろうか。


老婆心ながら、もう一つ付け加えておこう。
もはや、今では常識となったが、
鯛玉と本体が分離しない、
いわゆる固定式のタイラバはNGである。
遊動式を使おう。



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