2尾目の本命を、1尾目から4時間後に釣り上げて、 納竿となるはずが、大ダイ流れのような状況になっていた。
ここでやめたら、男がすたるとばかりに、続けた。 もういい、今日は、疲労困憊になってやろうじゃないか。 果たして、運命は、その通りに展開していった。
やはり、20巻きほどで、がつんときた。 しかし、あとが違っていた。 キュイーーーーーン。 キュイーーーーーン。
と、強烈とまではいかなかったが、長い引きが二度あった。 ドラグはまるで役に立たない。 指ブレーキをあてながら、やり取りをした。 キュイーーン。
キュイーーン。と、引きはやや弱まったが、 本命ならぬパワーに、青物であることを悟った。 ハマチか、ヒラゴか。どちらかだろう。
青物と言えど、80cmオーバーでなければ、 慌てる必要はない。ネットインは楽勝のはずだった。
ところが、・・・。
ふと後ろを振り返ると、あと40mくらいのところに 籠網の旗が見えた。 船が流されて、その旗を直撃しそうな方向である。 懸命に巻き取ろうとしたが、
間に合うような状況ではなかった。 旗の下にはロープがあって、その下に籠がある。 更には籠と籠をつなぐロープもある。
魚がそのロープに糸を巻き込んだら、万事休すなのだ。
船はどんどん旗に近付いていく。
船長にしては、めずらしく焦っていた。 どうするのかと思っていたら、 船のエンジンをかけ、微速で移動し始めた。 旗を避(よ)けようというのである。
竿を左手に、船のハンドルを右手に持ち、 旗を避けて、ゆっくり横に走らせた。 その間も、時折、リールを巻き上げながら、
船と旗との距離を目ではかっていた。
ようやく、安全と思われる位置まで船を移動させた。 これで、やり取りに専念することができる。
船首に立ち、右に左に竿先を動かしながら、 青物の引きをかわそうとしていた。
そして、ついに、長く白い魚体が浮かんできた。
ヒラゴだった。
まさしく、危機一髪の、「旗かわし」の術。 この程度の大きさで、これほどの焦りと緊張感は、珍しい。 もし、80cm以上のヒラマサやブリだったら、・・・。
と想像すると、このサイズはむしろラッキーだったと言える。
これにて、納竿!
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