単独では、本命が一尾でも釣れていれば、 4時間を超えることはあまりない。 特に、漁の日で、加工作業がある場合は、
冷凍室に切り身を仕舞い終えるまでに2時間を要するから、 実釣2時間以内で納竿することも多い。
釣りの日(アングラーズデー)は、
魚をキープする必要がなく、魚の引きを味わう為だけの日で、 さばく手間を省けるので、その分、釣行時間が長くなる。 キャッチ&リリースは、意外に面白い。
特に、美しいマダイが泳ぎ去って行く後ろ姿は、 拍手ものである。
さて、中型ながら苦難の末、本命を得て、 6時間近くが経過していた。
ちょうど午前8時に出港し、もうすぐ午後2時になる。
それでは、これで最終フォールにしようと、 タイラバを海中に落とした。
今日は、潮の動きが極めて遅く、 最高でも船流速度が1.2kmしかなかった。
ところが、この時、目を疑った。
速度計が、1.8kmになっていたのだ。 水深は、70mちょうどくらい。 海面水温は、16℃。 糸は、ほどよくインクライン(斜め)だった。
「大ダイ流れ」を感じた。 大物が釣れそうな気配がしたのだ。 このエリアでの大物の実績はゼロ。 中型なら数尾といった程度だった。
しかも、今日は活性がひじょうに低い。
突然のことだった。 底付近で、ガツ、ガツッとタイラバに反応があった。
掛かったなと感じたが、引きは左程ではない。 イトヨリダイの大きいのくらいだったと思う。
そのままハンドルを回していると、・・・。
ギュイーーーーーン。しばらくして止まり、 またもや、ギュイーーーーーン。 「大ダイ流れ」らしき雰囲気はあったが、
まさかの釣果音の大音響に慌てふためいた。 まさしく、青物の引きだった。 潮の抵抗が強いのもあって、ドラグがあってないようだった。
指ブレーキで、何とか引きをかわしつつ、 懸命のやり取りをした。
底を切った。 これでヒラマサでも取れると少しだけ安堵した。
大型のブリなら、まだまだタフなやり取りは続くだろう。 ちょうど6時間経過していたので、 体の疲労も並々ならぬものがあった。
もう勘弁してほしいというような引きだった。
ところが、中層付近で、ほとんど引きが止まった。 ん、ん?まさか、大ダイ?
海面近くで、ラインが表面を這った。 大ダイ特有の、「向こうでポッカリ」だった。
69cmの準大ダイだった。
計測して、目を疑うほどに、 堂々とした見事な体型だった。 70cmは優に超えているだろうと思っていた。
美しいオスの引きは、途中まで青物と変わらないが、
ここまで、冷や汗をかいたのは、あまり覚えがない。
低活性の条件だった。 ほんのわずかな大物の時間をとらえることができて、
まさしく、感無量だった。
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