無風ベタ凪ゆえの低条件だった。 船は0.7kmで動くのが精一杯。 それでも、活性は高く、食いも比較的良かった。
したがって、ほぼ入れ食い状態。
チダイ、小型マダイが落とせばすぐにコンタクト。 二桁を稼ぐに大した時間は掛からなかった。 鈎の点検に追われた。 だが、本命はアタらない。
おそらく、タチウオやサワラも多かったようで、 早々と、6セットもの鈎が失われた。 6セットというのは、鈎ロスの新記録であった。
昼前に、福岡からゲストが二名やって来る予定だった。 観光がてらに、ちょっとだけ船に乗ってみたいとのこと。 お試しクルージングとでも言おうか。
それまで、お土産を釣っておこうと思っての出港だった。
次々と、サワラに仕掛けを奪われつつも、 チダイに加え、良型のアオナと、 超高級魚のシマアジがコンタクトした。
たっぷりとお土産ができたのは幸運だった。
シマアジは、人にはまずやらないのだが、 ゲストは、好感の持てるいい人なので、
大盤振る舞いすることにした。
一度だけ、わずかな糸出しがあって、 ぎりぎり本命かなと、釣り上げてみると、
45cmちょうどのジャッキーだった。
これは、お土産にはやれない。 気持ち良くリリースした。
三時間で、お土産釣りを終了し、 港へ帰って、鱗と内臓を取りながら、
ゲストが来るのを待っていた。
午前11時にゲストが到着。 ほぼ手ぶらで船に乗せ、 船内備品のライフジャケットを付けてもらい、
いざ、出港! 初乗船のゲストは、不安そうに、 もう一人のゲストの腕にしがみついていた。 ちょっと、不思議な光景だった。
地上に足が着いていないと、落ち着かないそうだ。 船も飛行機も駄目。
沖に向かっていると、 「もうそろそろいいですよ。」 との声が掛かったので、停船。 まあまあのポイントの上だった。
せっかくだから、鯛ラバという釣りのやり方を、
教えてみることにした。 鈎は最後のワンセットだった。
落として巻くことを教え、 リトリーブの速さも丁寧に伝えた。
掛かっても止めずにそのまま巻き続けることも。 釣りをやったことがなかったので、 「アワセないように。」という指示は不要。
一度、小型のイトヨリダイのような引きがあったが、 途中で、鈎外れしてしまった。 ちょっと残念。
巻きスピードと、同じ速さで巻くことを教えようと、 実際にやってみせた。 彼女は飲み込みがいい。 始めてすぐにリトリーブのやり方を覚えた。
と、突然。
キュイーーーーーン。と強烈な釣果音が聴こえた。 慌てているようだったので、
竿を受け取って、いなしながら、サイズを確認した。 ああ、これなら大丈夫だろうと、 フィニッシュまでは自分でやらせることにした。
魚が
海面に上がって来ると、 大きさと重さにびっくりしたようで、 「きゃあー。きゃあー。」という叫びを連発していた。
もう一人のゲストに玉網で掬ってもらって、 無事、ランドオン。
59cmの準良型だった。
あっぱれ!
そもそも、釣りをするはずもなかった人が、 たまたま、竿を手にして、 ほんの僅かな時間で、
りっぱな本命を手にしたのである。 これほどのビギナーズラックはなかろう。 まさに、ミラクルである。 今年一番のドラマだった。
今回も、海の神の粋な計らいに、 大いに感謝しつつ、
三十分程のビックな「おまけ付きクルージング」を終了した。
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