中潮で、満潮が9時半という日だった。 満潮前後を狙えば、本命がコンタクトすると予想した。 北北東の3mとあったから、
きっと条件が好いだろうと期待した。
期待は裏切られる為にあるものだ。 微風ベタ凪だった。 船流速度は0.9kmが精一杯。
低条件のカテゴリー内である。 ちなみに、0.0kmでは、最低条件となる。
アゴ網船団は遥か沖の方で操業していた。
まだ島周りにはアゴの群れが到達していないようだ。
したがって、おこぼれを狙う大型のマダイたちは、 おそらく、沖に移動していると思われた。 大物は、身体が大きい分だけ沢山の餌を必要とする。
なかには、島周りのテリトリーから離れない、
引きこもりがちな大ダイもいるだろうから、 沖でなくても、稀に釣れる可能性がない訳ではない。 そういうマダイは、とりわけ警戒心が強いのだが。
今日は、ジャッキーでいいかな。 兎に角、本命に会い鯛。
案の定だった。 せっせとリトリーブするも、本命が反応しない。 釣れるのは、チダイのみ。 かれこれ、四尾ほど釣っただろうか。
うち、二尾をキープして、食材にすることにした。
チダイは、みそ汁の具材として実に旨い。 歯ごたえがあって、脂肪分はマダイより多い。
新鮮なものほど旨いので、 いいチダイが手に入ったら、その夜はみそ汁となる。
おかずはもういいので、 本命を釣りたかった。
強い引きの手ごたえが欲しいのだ。
すると、チダイとは異なる引きがあった。 それも連続。 残念ながら二尾ともに、キロ弱マダイだった。
42〜44cmと、本命とは僅かな違いだが、 手応えでもそれと分かるようになった。
「大きくなったらまた会おう。」とリリースした。
まあ、いい。準本命ではあるものの、 本命に近付いてきたような気がしていた。
それから、しばらくして直ぐに、
がつん、ぐいーん。と魚信があった。 よし、乗った! キュイーーン。キュイーーン。と糸も出た。 今度ばかりは、本命を確信したと思ったら、
ふっと軽くなって、鈎外れ。 だが、そのままリトリーブしていると、 がっ、がっ、がつっ。とまた、乗った! 別のマダイが追い食いをして来たのだった。
まことに珍しい事例である。
キュイーーン。という釣果音も、 先ほどよりやや小さかったが確かに聴こえた。 今度は、がっちり鈎掛かりしていた。
ちょうど、満潮前の潮が動き、 かなりの水圧が加わっていた。 50cm級かなと想像しながら、楽しくやり取りをした。
50cmちょうどの中型マダイだった。
オスだったので、丁寧に処理をして収めた。
ちょうど、三時間になろうとしていた。 低条件で食いは渋かったが、
最後に本命を拝見できたのは、ラッキーだった。
涼し気な気候となって、 本来なら、まだまだ秋を楽しみたかったが、
肘のことを考えると、そろそろ潮時(しおどき)であった。 何事も、無理はいけない。
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