南風でも、ある程度の強風なら、 船は風流れとなり、適度な船流速度になる。 この日は、4〜5mで、
のっけから、1.2kmといういい速度で流れていた。
弟子の浜ちゃんとその弟のヒロ君が乗船していた。 二人兄弟だが、いずれも好青年で、
気分よく釣りをすることができるのがいい。
「今日は、なかなかいい条件だと思うよ。」 と告げたはいいが、本命がアタらない。
他魚は高活性で、ヒロ君は、初鯛ラバで、 ビギナーズラックであろうか、 チダイ、キダイ、イトヨリダイと、コンスタントに釣り上げた。
数か所、本命を求めて移動したが、やっぱりアタらない。 マダイのみが食い渋っていた。 まあ、よくあること。
少々早いが、切り札(トランプ)ポイントへ行くことにした。 唯一、水深40m台でも大ダイの実績がある所だ。
早速、船長にアタリがあった。
キュイーーン。が二度。 しかも重々しい。 船流速度は2.0kmを超えていた。 上げの潮がちょうど強まったところだった。
どうやら、マダイではなさそうだ。 たぶん、マハタではないだろうかと予想していた。
予想通り、超高級魚のタカバが掛かってくれた。 船長は、期待以上の準本命を手に入れて、 もうじゅうぶんに満足していた。
あとは、ゲストに釣ってもらいたいと思っていた。 すると、これまたビギナーズラックだろうか、 ヒロ君の竿が大きく曲がり、キュイーーン。が出た。
「よし、いいぞ!」と思わず叫んだ。
潮の抵抗が強いので、 キュイーーン。が数度出た。 ラインは遥か向こうに流れていたので、
長い時間を掛けて、獲物を手繰り寄せていた。 「わあっ、たのしい〜。」 と、ヒロ君は、マダイの引きを堪能していた。
良型にはあと1cm足らずの、準良型だった。 人生初のマダイが、このサイズなら上出来である。 素直によろこんでいた。
う〜ん、あとは、浜ちゃんだなあ。 だいじょうぶかなあ〜。と心配していると、 「きました!」という嬉しい声があった。
「よし、やった!」と船長はよろこんだ。
キュイーーン。もあったので、 本命であることはまちがいないだろう。
バレないことを願いながら見守った。
そして、50cmちょうどの中型マダイがネットイン。 ほっと安堵の胸を撫で下ろした。
さすがは、トランプ・ポイント。
米国のトランプさんは、何かと人騒がせだが、 この島のトランプは、大抵、美味しい獲物を提供してくれる。 まことに有難いポイントである。
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