6月23日

コメント

思いもよらぬことが起こるのもまた、釣りの愉しさ。
たまに度肝を抜かれるようなことがあるからたまらない。

前回、イトヨリダイの入れ食いに遭遇したので、
ウォーミングアップを兼ねて、
そのポイントと同じエリアに直行した。
まったく同じでは芸がないので、ややずらした。

ここでも、さっそくのイトヨリが3尾。
うち、1尾はキロ級だった。
しかし、すぐにアタリがなくなったので、
身体が温まったこともあって、
移動することにした。

ところが、大潮の満潮前後だというのに、
船がまるで動かない。
風に押し戻されているのかと考えたが、
それならば、ラインは斜めになるはずが、真下。
首を傾げながら、少しでも船が流れるポイントを探した。

三度目の移動で、わずかに流れているところがあった。
0.7km前後と、ないよりましな程度だった。
まあ、いいかとばかりに、リトリーブを開始する。
無反応がしばらく続いていた。
そういえば、ここでは、随分前に
ヒラメがコンタクトしたということを思い出した。
ヒラメはまだ三度しかネットインさせたことがないので、
よく覚えている魚の一つだった。
ヒラメが来てくれたらうれしいんだけど。
と、思っていると、・・・。

ぐいっと、コンタクト。
ん?もしかして、ヒラメか。と思うや否や、
ギュイーーーーーン。と、凄まじい釣果音。
おおっ、大ダイか。とよろこんだ。
だが、巻いても巻いても巻けない。
50cmの本命で糸が出るように調整しているドラグは、
まったく役に立たなかった。

指ブレーキをかけて、重さを確かめようとすると、
またもや、ギュイーーーーーン。
ようやく、引きが止まったところで、
ポンピングをしたが、少しも上がらない。
籠網のロープにでも引っ掛かったのかと思うくらいだった。
とにかく、重い。ギュイーーーーーン。がまた出た。
ぐいぐいっと頭を振るような動きが伝わったので、
魚には違いないが、何だろう。
とんでもない大ダイだろうか。
ひょっとして、釣三丸記録の95cmを抜く。
そんな期待すら持つような重量感だった。

60mのラインカラーが見えて来た。
まだまだ道のりは遠い。
指ブレーキをしながらでないと、糸は出て行くばかり。
掛け過ぎると、バチンとブレイクアウトする。
その匙加減は、この炎月というリールに変えてからは、
更に難しくなった。その点では、カルカッタの方がいい。
まあ、お陰で、指ブレーキが随分と上達したようだ。

長い距離ではないが、あちこち走るので、
船のデッキを一周したのち、ミヨシに移った。
そのほうが、船外機を気にしないでいいので、
やり取りがたいへんしやすい。
エンジンをかけようかとも思ったが、
ほとんど真下に突っ込んでいたので、
その必要もなかった。

ミヨシで竿を右側に移したり、
左側に移したりして、
すこしでも、ポンピングがしやすい体勢を作っていた。
そうしないと、とてもじゃないが、巻けない。
ポンピングした分、急いで糸を巻き取る。
それを何度繰り返したことか。
あと40mでも、30mでもギュイーーーン。と、
たびたび糸が出て行った。
もう、いい加減にしてくれえ。と弱音を吐きたくもなった。
だが、ここまできた以上、魚の顔を見ない訳にはいかない。
幾度となく、自らを鼓舞しつつ、
長い、長いやり取りに耐えていた。

ようやく、ようやく、やっとの思いで、
海面下の魚影を確かめることができた。
やっぱり。
その白い魚体は、ヒラマサだった。
だが、ここで油断しては駄目だ。
以前、玉網に入れる寸前で暴れられて、
自然リリースの憂き目に会ったことがある。

玉網を取りやすい位置において、
海面に浮いた瞬間掬おうと思った。
浮いた。バサッと玉網を入れたが、失敗。
ヒラマサは、再び糸を出して潜った。

幸い、バレてはいなかった。
右舷に移動して、再度魚体を浮かせた。
よし、今だ。バサッ。
やった。フィニッシュだ。
両手で玉網の枠を持って、ヒラマサを引き上げた。
そして、へなへなと座り込んでしまった。



体長はちょうど100cm。
釣三丸では二尾目のメーター級だった。

走った距離は前回のヒラマサのほうが長かった。
このヒラマサは、走るというより、
底へ突っ込むという感じで、
それだけに、圧倒的な重量感があった。
よくぞ、この細仕掛けで、獲れたものだと、
我ながら、おどろいている。

たいへん幸運だったのは、
掛けたポイントの周りに荒い瀬が無かったということ。
もし、瀬があったとしたら、
最初のギュイーーーーーン。で、ラインブレイクしていただろう。
リーダーにはまったくざらつきが無かった。

精も根も尽き果ててしまった。
長い長いタフなファイトを振り返りながら、
愛艇を母港へと向かわせた。

格闘、三十分。
ああ、つかれた。



inserted by FC2 system