5月、6月は例年になく凪が多い。 まるで退職前に戻ったかのように、ほぼ日勤。 土日も関係なく、いそいそと港へ向かう。
ブラックな個人事業主のようだ。 確かに、疲労感は拭えないのだが、 家から凪の海を見ると、心の中の事業主が、
「ほれ、出船して来い!」と叫ぶのである。
本日も早朝出勤。 珍しくPM2.5が飛んでなかったので、 気持ちいい海を愛艇が進んで行った。
大気汚染が無いと、こうも清々しいものか。
これで、釣れればいいのだが、 この凪の南風ではむずかしいだろうなあとつぶやいた。
やっぱりそのようだった。 A級ポイントの周辺を果敢に攻めるが、 ノーコンタクト。 いま、流行りのイトヨリダイくらいはアタらないものかと、
いじいじしていると、アタった。 小型が2尾。無事、リリースに成功。
このところ、釣れるのはメスが多くてマダイ不足なのだ。
以前は、メスでも切り身不足であればキープしたものだが、 この頃では、マダイへの愛情が更に深まり、 そういうこともほとんどしなくなった。
内蔵がはみ出してしまったものは仕方ないが、 自称世界一マダイをリリースする小漁師である。 資源保護には努めたい。
A級ポイントを何度流しても、ノーヒットだった。 しょうがない、放浪流しでもするかと、 そのまま船を流し続けることにした。
むろん、当てがあるはずがない。 GPSの行先を見ていると、実績の無いエリアへ進んでいた。
まるで、「今日は諦めなさいよ。」と伝えているかのようだった。
ところが、どっこい。 イトヨリダイが入れ食った。
良型も数多くコンタクトしてきた。 45cmという良型も数尾。 わずかな釣果音も聴くことができて、 なんだか、楽しい釣りになって来た。
結局、大小合わせて15尾ものイトヨリダイ。 これは、釣三丸の数の新記録だった。 パンパカパーンとファンファーレが鳴ったかのようだった。
釣って、鈎を外し、小型はリリース。 大型は〆て血抜きをしてキープ。 その後でデッキを水洗いして、鈎の点検。 4、5尾釣れると、交換していたので、
入れ食いが終わることには、 準備していた5セットの鈎のうち、4セット目を付け替えた。 仕掛けを落とせばすぐにコンタクトしてくるからたまらない。
せめて、キュイーーン。が一度くらいは欲しいなあ。 と思っていたら、キュイーーン。 しばらく巻いていると、また、キュイーーン。
よしよし、50cm級の本命だ。 と、想像していたら、ちがっていた。
ジャッキーなアオハタだった。
これは、「アオナ丼」の具材にしよう。 アオナは、アコウやタカバよりワンランク下と見られているが、 「丼」にすると、大差なく、旨い。
準本命を見たら、二時間を過ぎていたので帰りたくなった。 船は放浪流しを続けていて、
実績の無いポイントを通過中だった。 さて、もうひとフォールで終わるとするかと、 リールのクラッチを切った。
スルスルスルとほぼバーチカルに仕掛けは落ちて行った。
リトリーブ開始直後。 がつっと鈎掛かり。イトヨリダイより強烈だった。
キュイーーン。キュイーーン。 ぐい、ぐい、キュイーーン。 よし、やった。本命が来たぞとよろこんだ。
57cmの食べごろサイズの中型だった。
しかも、キープ可能なオス。 これは、かなりうれしい。
キロ級な根魚に本命とくれば、もう言うことは無い。
ていねいなキープ作業の後、納竿となった。
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