いい凪。よぎる不安。 は、的中。Aポイントの深場では、 船が流れず、アタリ無し。
こんな時、よく行く所がある。
浅場の潮がよく通すエリア。 だが、そこは、二隻の籠網船が作業中だった。 怒号のようなエンジン音があれば、 マダイは警戒してタイラバを追わない。
二隻が仕事を終えるまでの二時間が、 長く長く感じられた。 プレコンタクトすらないのだった。
根魚くらいは、と思ってリトリーブを繰り返すも、 低条件の食い渋りの状況では、アタるすべもない。 本命は、エンジン音に警戒心を持つ。
ようやく二隻が遠ざかり、
満を持していたかのように、高速移動。
案の定、そこは潮が動いていた。 風は無く、完全なる上潮流れ。 風流れよりも条件が好いことが多い。
わくわくしながら、ハンドルを回す。 船流速度は1.4km前後と、ほぼ理想的。 20巻きの通常速度でリトリーブを続けていた。
イトヨリダイの入れ食いに遭遇した。 瞬く間に、良型ばかり四尾を釣り上げた。 どれも丸々太っていた。 夏場が産卵な彼らは、現在就餌活動に忙しい。
脂もよく乗って、美味しいのだ。 切り身を一晩寝かせて熟成させ、 刺身にすると、おどろくほど美味であることを以前確かめた。
ぐいっ。来た。 ぐいっ。追って来た。 ぐい、ぐい、ぐいん。乗った。 ギュイーーーーーン。と、最初のダッシュがあった。 おおっ、大ダイか。
と思ったが、重量感はたいしたことはなかった。 されば、良型くらいか。 まあ、いい。本命であることはまちがいない。
と、丁寧なポンピング&指ブレーキで、 魚体を海面に浮かせることに成功した。 美しいスリムなメスのマダイだった。
さすがはメスといったいい引きをみせてくれたが、 産卵後とあって、それは始めだけ。 すぐに、疲れてしまったようだった。
優しくリリースすると、穏やかに泳ぎ去って行った。 乙姫様によろしく!
本命一尾を確保したことに満足し、
この時点で三時間が経っていたので、 気持ち良く、納竿することにした。 イトヨリダイの切り身作業も待っている。
またしても、条件のちがいで、
こんなにも釣果が変わるのかと感心しきりの釣行だった。
0.0kmと1.4km。 陸上にしてみれば、1.4kmなど、
その速さで歩くことも難しいくらいだが、 海の上では、雲泥の差なのである。
釣三丸格言。 船動かざれば、魚(うお)釣れず。
流れをどん欲に探すべし。
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