今日で、九日連続の出港だった。 休みを与えないブラック企業がやり玉に挙がっているが、 釣三丸も、このところ休みが無く、
ブラック鯛ラバ船となった。 しかも、五月に入って、17回も出船し、 すべてにおいて、本命及び準本命を釣り上げている。
ブラックではなく、ゴールド釣三丸。
だが、今日ばかりは、その記録が途切れそうな按排だった。
なぜなら、無風ベタ凪、0.0kmが続いていたのだ。 活性は低くはない。 その証拠に、頻繁に、プレコンタクトがあった。
一度、ギュイーーーン。が出たが、鈎外れ。 低条件ならば、せっかくの釣果音も、 ニアコンタクトで終了ということになる。
鯛ラバは、一にも二にも、その日の条件がものを言う。
どこへ船を走らせても、0.0kmは続き、 ほとんど船が流れることはなかった。
それでも、なんとか、キロ級の一尾くらいは。 そう願ってはいたが、半信半疑。 二時間という長い空白が、虚しさを増幅させていた。
しかし、ベタ凪はいい。 まるで湖に浮かんでいるようで、 ぽちゃぽちゃと可愛らしい波の音が、 船に当たっては生まれていた。
今日は、釣りはなかったということにして、 クルージングのみを楽しもうと考えるようになっていた。 それでもいいなと思うほどに、
このところ、いい釣果が続いていたのである。 冷凍室は切り身で満載だし。
ベタ凪の楽しみはまだある。 船を大きな漂流物と勘違いして、
様々な稚魚の群れが目の前に現れるのだ。 それが、また可愛い。 これほど感動的な水族館もあるまい。 天然の、またとない稚魚水族館。
最近の海面は、マダイの稚魚はほとんど見られないが、 代わりに、ヒラマサの稚魚の群れをよく目にするようになった。
このところ、ベタ凪の日は、毎日のように出会う。 すでに、10cm前後に成長した十数匹の群れ。 イエローテイルキングフィッシュという英語名の通りに、
尾びれが黄色くて、体型はもうすっかり大人のヒラマサと同じ。 ミニサイズのヒラマサがやがて、 強烈な釣果音を与えてくれるかと思うと、 目に入れても痛くないほど可愛い。
まさに、島の海の大切な宝のひとつだと言えるだろう。 釣りはそっちのけで、ヒラマサの稚魚たちを、 詳細に観察しては愉しんでいた。
今日は、これにて、終了。
となるはずが、駄目元で最終流しをすることにした。 近くに、よく潮が流れる浅場があることを思い出した。
よさそうなポイントに到着し、速度計に目をやると、1.1km。
がつーん!ギュイーーーン。 おおっ、いきなり大ダイかとも思ったが、
よく聴くと、キュイーーン。だった。 それでも二度、三度となく糸が出たので、 逃してはなるまいと、やり取りに力が入った。
良型に近い美しいマダイが挨拶をしてくれた。
色も体型も完璧なほど美しいマダイだった。
58cmの準良型。なかなかの引きで、楽しませてくれた。 急いで鈎を外し、記念撮影をして、お引き取りいただいた。
いい流れは続いている。
速度が、1.4kmになり、ややインクラインになった。 あれっ、これって、大ダイ流れじゃないか。 と、嵐の前の静けさのような不気味さが漂った。
がつ、がつっ。ゴン!と激しいアタリが竿に伝わった。 ギュイーーーン。ギュイーーーン。ギュイーーーン。 あわわわわ。ヒラマサだあー。
ギュイーーーン。ギュイーーーン。 気合いを入れてやり取りをし続けたが、 引きの強さと重量感に圧倒されそうになった。 ギュイーーーン。
おい、おい、まだ引くのかよおーと弱音がもれた。 はあ、はあ、ぜいぜい。と息も上がって来た。 ここまできてバラす訳にはいかない。
せっせ、せっせと頑張った。 上層に来ても、まだ引いていた。 ヒラマサの90cmクラスだろうと判断していた。
船底に入っていこうとしていたので、 やばい!と思っていると、 魚はいきなり急上昇。 「ゴツン。」と船底に衝突した。
ん、何だか変だ。と思い、真下をみると、 大ダイがポッカリと浮かんでいた。 えっ、こんなことって、・・・。
あり得ない展開に、思わず笑ってしまった。
この画像が、あり得ないマダイである。 オスの77cm。ガングロ大ダイ。 ヒラマサのように引き、ヒラマサのように上層でも引き、
最後の最後に、力尽きて、ポッカリと浮かんだ。 前代未聞。大ダイはほんとに個性がある。 みんなちがって、みんな面白い。それが大ダイなのだ。
これにて、終漁!
<追記>
本日、今年初のカナトフグが掛かった。
早速、スカートを数本食いちぎられていた。 この魚との有難くない付き合いが、 ついに、始まってしまった。
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