予報では、北東風の4mとあった。 だが、気圧配置図を見ると、 高気圧にすっぽり覆われているではないか。 こういう時は、4mが3mになる。
気象台スーパーコンピュータでも、 このような誤差はある。 私どもマイボート日勤アングラーは、 そういうことは百も承知である。
まずは港へ行き、風と波を確かめてみる。 予報に忠実に出港して、すぐさま引き返したり、 逆に出港中止にして、 家に籠っていたら凪になったことも、
度々あるからたまらない。
最悪なのは、ゲストが乗船予定で、 凪予報だったのに、出港不可だった日。 確か、三度くらいあったと思うが、
それも、もう随分前で、 今はそういうことはまず起こらないくらいに、 気象には詳しくなった。
今日は、実際に沖へ出てみると、 十分に釣りが可能な波風だった。 秋のような気候で、 たいへん理想的な北東風が吹いていた。 船流速度は平均1.6kmとまさに、ベスト。
こんな時は、高い確率で大ダイが来る。
一目散に秋の北東風ポイントへと向かった。 季節はちがうが、まあ、大丈夫だろう。
異なっているのは、水温だ。 秋は20度前後であるが、今は16℃。 ということで、秋よりも食いは渋いが、
16℃以上あれば、あまり憂う必要もない。
流し始めてすぐに、小型マダイが竿をたたいた。 40cmほどだったが、
このサイズは最後までよく引くので楽しめる。 お父さんを呼んで来なさいとリリースした。
がつっと来るアタリがあった。
また、小型かなと予想していたら、チダイだった。 チダイは、同サイズなら、 マダイより身が引き締まっていてそこそこ旨い。
成長が遅い分だけ、旨味が籠る。 今日は、リリースした。
あれえ、おかしいなあ。 と、釣三丸の船長はしきりと首を傾げていた。
大ダイがくる予定なんだがなあ。 やっぱり、水温のせいかなあ。 ぶつぶつ。ぶつぶつ。
しばらくすると、 インクラインに出ていた糸が、
突如として、バーチカルに近くなった。 風が止まったのだ。 だが、船は1.2kmほどで動いていた。 潮流れである。
風流れより、潮流れに分がある。
と、
この変化に対応した本命がいた。 が、がっ、ぐいん。 始めは小さ目のアタリで、 イトヨリダイかなにかと思っていた。
ハンドルを回し続けても、 ぐいぐいと引きはするが、糸は出ない。
大ダイには得てしてこのような習性がある。
この時点では、タイラバのような小さな餌が、 まさか危険物だとは思っていないのである。 完全にタイラバをなめている。
既に餌ではないことは悟っているので、 振り払おうと、大きく首を左右に動かす。 だが、鈎が肉にがっちり食い込んで外れない。
そこで、危険回避スイッチが、バチンと入る。
ギュイーーーーーン。 釣果音と共に激しくスプールが逆回転した。
大ダイだろうと思った。 が、中層まで浮かせても、直下でぐいぐいと引いていた。 ん?これは、ヒラマサによくあるパターンだ。
忘れもしない、四月二十日に経験した引きとそっくりだった。 いや、もう、ヒラマサの切り身はしばらく要らない。 と思っていると、魚は勢いを無くし、
向こうにポッカリと浮かび上がって来た。 よし!やっぱり大ダイだった。
誰が見ても雌雄まちがうことはないようなオスだった。 体長は75cm。これで10食分の切り身を確保した。
この日は、午前6時半に出港し、
この大ダイを釣り上げたのが8時前だった。 僅か、1時間半の釣行だったが、 切り身作業の時間を想い、これで切り上げることにした。
それほど、前日の長時間釣行が効いていたのだった。 ふくらはぎの筋肉痛は続いていて、 今にも、また、攣(つ)りそうだった。
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