月7日

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今年初の濃霧の中、出船。
視界が極めて悪く、30mといったところか。
スローでしか前進できない。
予定していたポイントへ行くまでに、
途中停船しては、フォールを重ねたが、
たった一度のプレコンタクトがあったのみ。
それも、ぐっという極少な反応だった。
無風、ベタ凪、潮も流れず。
こんな時は、コンタクトするはずもない。

相変わらず、プランクトンもベイトも魚影も、
ポイントを問わず群れていた。
おそらく、タイラバは真っ直ぐ上に、
違和感の塊のように泳いでいるのだろう。
マダイの皆さんは、誰も、気に留めてくれない。
他魚すらまったく反応無し。

おまけに、視界が限られているので、
なんだか恐ろしい。
万が一にでも、突然船が現れて衝突される危険がある。
こちらは小船なので、大破し、海に投げ出されるだろう。
常に見える限りの遠方を(といっても30mくらいだが)
四方八方見渡しながら、他船の動きに集中していた。
非常にストレスフルな釣りだった。
正直な話、緊張の連続なのである。

周りの船からも、愛艇は見えてはいない。
いつしか、「霧隠れ釣三」という忍者になっていた。

まるで釣れる気配もなく、二時間半が経った。
あ〜あ。このまま終わりそうだな。
ふーっと大きくひとつため息をついた。
海面は、べたーっと湖のようだった。
この不気味さは、異様である。

船の流れるポイントを探せばいいとは思ったが、
この霧では、危なくて移動もままならない。
突然、寄せ波がやって来て、船が大揺れになったりした。
ベタ凪なほど、寄せ波は大きくなる。
濃霧の緊張感は、時化のそれよりも大きいのだ。
風が無いので、霧が消えることはなかった。

諦めかけていた、その時だった。
何を思ったのか、海が動いた。
これまで、0.0kmという速度表示にうんざりだったのが、
なんと、1.6kmで流れているではないか。
おっと、これはいい感じで動き始めたぞ。
今日、初めて、コンタクトの予感がした。

がつ、がつっ、ぐいん。コンタクト!
ギュイーーーン。ギュイーーーン。
わああ、こりゃたまらん。ギュイーーーン。
指ブレーキも弾かれるような釣果音だった。

ぐい、ぐいっと頭を振り始めた。
疲れたという意思表示をマダイがし始めたのだった。
その後は、重量感のみが伝わってくるようになった。
潮に流されているので、重々しい。
これは、大ダイに違いないと、糸を手繰り寄せた。

だが、型は思ったよりも小さく、
63cmの良型が浮いて来た。



良型のオスが、これほどまでに引くとは。
大ダイを確信させるような釣果音だったのだ。

この流れで、しばらくは釣れ続くと思われたが、
この一尾で、満足の域に達していた。
締めて血抜きをすると、ちょうど三時間が経っていた。

切り身への転換作業も待っているし、
濃霧ストレスで疲れてしまったし。
今日は、これにて納竿することにした。

帰路は、三十分。
ずっと濃い霧の中を船は進んで行った。



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