月28日

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気が付けば三月も終盤となっていた。
今年は厄介なくらい、ベイトが多い。
小魚が集まるのはいいことだが、
多過ぎると、マダイたちは、
ベイトにばかり気を取られ、
タイラバへの注意が散漫になる。
腹も満たされ、人工物のルアーを、
敢えて追いかけようという食い気も生まれにくい。

ただ、条件さえ整えば、
素早い小魚に比べると、ずっと捕食しやすいので、
追い掛けてもいいかなと思うだろう。
そこが、鯛ラバという釣りの狙い目である。

マダイは特に小魚の捕食が、
ブリやヒラマサより下手である。
小魚の逃げる方向をある程度は予測しないと、
キャッチできないのだ。
その点、等速で同じ方向へ泳ぐタイラバは、
恰好の餌になる。

いい凪だったが、うねりが残っていた。
釣り辛いということもなく、
遠方からのミニボートも浮かんでいた。

今回は、今までのエリアとは別の海域へ行くことにした。
年の初めに好釣果があった所だ。
途中で、大魚らしき魚影が多数魚探に映っていたので、
思わず船を停めて、フォールを開始した。
二、三尾では素通りするのだが、
二桁も映ったからたまらない。

だが、結果は、ノーバイト。
やれやれ、やっぱり駄目かと思ったが、
念の為、もう一度流してみることにした。
満潮から下げの潮が動いていた。

すると、フォールでコンタクトした。
ギュイーーーーーーーーン。
最初の釣果音でヒラマサだと確信した。
ギュイーーーン。は、四、五回断続的に続いた。
強めの指ブレーキをしばしば掛けながら、
なんとか勢いを止めようとした。

荒い瀬が多い所で、
今までに、幾度となくヒラマサが掛かったが、
すべて、リーダーブレイクとなっていた。
今回も、そうなるだろうなと思いつつ、
やるだけやってみると、
珍しく、ブレイクから免れた。

それでも、さすがにヒラマサで、
海面下に姿を現してからも、やり取りに苦労した。
船底の方へ走るのを、
ミヨシに移動して右に左にかわしながら、
ようやく、玉網入れに成功した。



体長は84cmだった。
1mをランドオンしたという経験は生きている。
しかし、リーダーを指でなぞってみると、
ザラザラになっていた。
4号リーダーがよく耐えたものだと冷や汗ものだった。

この「春マサ」は今夜刺身でいただこうと思い、
血抜きを念入りにした。
ついでに腹も割いて、内臓を取り出した。
こうすることで、ヒラマサにも寄生する虫が、
身に入るのを防ぐことができる。

これで、港へ戻ってもいいかなとも思ったが、
鯛ラバ師としては、やはり本命に出会いたい。
ということで、当初考えていたポイントへ向かった。

始めは、船がほとんど動かず、苦戦した。
釣れる気がしないのである。
案の定、プレコンタクトすらない状態が続いていた。

干潮は午後2時だったので、
潮が動くのは、まだまだ先である。
コンタクトは難しいかなと思っていた矢先、
どういう訳か、船が動き始めた。
1.1kmという速さだったが、0.0kmよりずっといい。

流れる方角も、大ダイポイントへ向かっていた。
おおっ、これは、もしかすると。
と思っていると、そのもしかになった。

がつ、がつっ、ぐいん。コンタクト!
ギュイーーーーーン。
よし、来た!ギュイーーーン。
ギュイーーーン。と釣果音が何度も響くし、
中層まで上がって来ても、まだまだ引いた。
あれーっ、また、ヒラマサか。とやや残念に思った。
まあ、いい。これは島の友人へ贈ろう。
などと、捕らぬ狸の皮算用をしていたら、
表層付近で急に勢いが弱まり、
「向こうでポッカリ」が起こった。
マダイだったのである。



体長70cmちょうどの大ダイだった。
これは明らかにメス。
内臓がはみ出していたので、
何とか中に入れて、放すつもりだったが、
元に戻らず、仕方なくキープすることにした。

この時点で、ちょうど三時間が経っていた。
ヒラマサと大ダイの、
凄まじいばかりの釣果音を、
たっぷりと聴くことができて、大満足だった。

渋くても、潮が動き、変化が起これば、
ベイトより、タイラバを追おうとする。
そういう典型的な事例だったように思う。

港に戻り、二尾をさばき、別荘で切り身作りをした。
掛かった時間は、三時間。
釣行時間と同じで、かなり疲れたが、
旨いものを食べる為には、労を惜しんではならない。



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