凪の予報が外れ、 港に到着すると、北東の強風が吹いていた。 どうしようかと迷ったが、 まだ白波は殆んど立っていなかったので、
朝の内なら大丈夫かも知れないと、出港することにした。
船は、1.2kmで流れており、 これならば、いいだろうと、リトリーブ。
おびただしいほどの魚の群れは見られるが、 とんと、アタリらしきものが無い。
大量のプランクトンとそれを狙うベイトの数が半端ではない。
魚探は、黄色や赤で覆われていた。 これだけ食料があれば、 何も無理してタイラバを追うことはない。 他魚からは、完全に無視されていたようだった。
名付けて、「過餌シンドローム」。
それでも、マダイなら好奇心が強いので、 ごく稀にではあるが、タイラバに関心を寄せるのもいる。 それを気長に待つしかないと思っていた。
その時は、意外に早く来た。 ぐい、ぐいっと、タイラバを引っ張っている。 鈎掛かりはしたようだが、 いつまでも、首を振っている。
底付近で掛けたのだが、 20巻きを過ぎた頃になっても、 まるで、イトヨリダイか小型マダイでもあるかのように、
引きは弱かった。きっと小物だろうと思っていた。
30巻きほどすると、突然、キュイーーン。 と糸が出た。キュイーーン。キュイーーン。
おおっ、これは、本命だったんだ。 と、よろこんだが、まだ、半信半疑だった。 危険回避スイッチが入るのが、 これまでになく遅かったからだ。
キュイーーン。と、四度目の糸出しで、 ようやく確信するに至った。
ポンピングして重量を確かめると、 良型ほどの重さを感じた。
それからは、丁寧にごり巻きしながら、 魚体を海面に導いた。
オスかと間違える程、腹が黒いメスだった。
腹は黒くても、
腹黒い人間とは違って、 マダイの性格は素直である。 63cmの体型の美しいマダイだった。 これが、マダイのメスの婚姻色である。
そろそろ産卵が近いことを物語っていた。
記念撮影をすると、 産卵仲間の元へ元気に戻って行った。
1時間半での釣果だった。
これで、課題達成となったので、 やや、モチベーションは低下していた。
それを見透かされたかのように、
北東風が更に強まり、白波があちこちに見え始めた。 船流速度は2.0kmを超え、最大2.8kmになった。
ラインにはプランクトンが纏わり付いているので、 0.8号が、1.5号と同じくらいの、 フォールスピードとなって、潮ボケが早過ぎるようになった。
こういう条件では、まず、釣れない。 ラインの角度が45°を超えると、丸見え。 だめだこりゃ、と諦めることにした。
秋の始めは、北東風がよく吹くが、 季節の変わり目の春の始めも、同じく北東風が多い。 違っているのは、水温で、
秋なら、25℃を超えているが、今は14℃しかない。 この10℃以上の差が、食い渋りの決定的な理由で、
魚の数は多いのだが、渋いという状況を生み出している。
だが、今回で、五回の出船で、 必ず良型以上を手にしたことになった。
大物五連続というのも珍しい。 釣三丸スタンダードの底力でもあるが、 乗っ込みシーズンであることを匂わせているのは確かである。
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