風は弱まっていたが、 昨日までの時化で、波浪注意報が出ていた。 白波が立っていて、船もかなり揺れていた。
例によって港近くで、もう少し凪ぐのを待った。 魚探にはマダイの群れらしくものが多数映っていたが、 プレコンタクトすらなかった。
小一時間を費やしたが、他魚すらもアタらない。 海水を手で触れてみると、しっかり冷たかった。 本命や、準本命のヒラマサ以外の、
他魚からの魚信も無い日は、激シブである。
コンタクトは無くとも、 丹念にリトリーブを続けることが必要だ。 釣れない時間が多いほど、リトリーブは上手くなる。
鯛ラバには経験や技は不要だが、 エキスパート(熟練者)というのは存在する。 手にかかる微妙なタイラバの重量感のちがいから、
潮を読むことができるようになる。 僅かな潮の変化から、魚の活性を読み取るのである。 私も600回以上の出船経験からその重要性を学んだ。 釣三丸流の「潮読術」とでも言おうか、 これは、釣れない日の方が、よく磨かれる。
しばらくすると、風が更に収まり、 沖へ行くことが可能になった。 11日前に、激釣したポイントへ向かう。 これだけ間が空くと、
群れが移動している可能性の方が高いが、 満潮前の潮が動くチャンスに、 そのポイントを取り敢えずは狙ってみようというのである。
当てもなくポイントを巡るより、 前回よく釣れたポイントから始める方が、 効率が良いことが多い。
だが、そこでは、釣れなかったので、
更にポイントを沖にずらし、 かつての大ダイポイントを狙うと、 が、が、がつっ。とアタリがあったかと思うと、
ギュイーーーン。が出た。大ダイだったと思う。 よし!と小さく叫んで、やり取りに本腰を入れようと思ったら、 ふっと軽くなってしまった。単純な鈎外れ。
低活性の日ほど、このニアコンタクトが多い。
あーあ。と小さく落胆の声を上げたが、 それっきり。悔しさは微塵も残らなかった。
低温期にはよくあることである。
それ以降、また、ぱったりとアタリは止まり、 リトリーブの練習場となっていた。 潮読術を極めるには、釣れなくても、
退屈でも、淡々とハンドルを回し続けるのが肝心。
プレコンタクトが三度、ニアコンタクトが一度あった。 確かに、マダイの群れは居るのだが、 なかなか、捕食スイッチを入れてくれないようだ。
放浪流しさながらに船を流し、 いつの間にか、前回の激釣エリアまで流れ着いていた。 すると、まるでスルメイカのような鈍いアタリがあった。
そのまま巻き続けていると、またもやアタリ、 それが、三度続いた。五十巻きをした時だった。 ぐいん、と強いアタリに変化し、
ギュイーーーン。と釣果音が響いた。 強い音は、二度あった。 その後は、キュイーーン。に変わり、 魚が、良型のようなサイズであることを悟った。
中層からはほとんど引かなくなり、 「向こうでポッカリ」があった。
62cmのメスの良型マダイだった。
二度、三度、ヒラマサ並の引きがあったので、 内臓がはみ出していないかと心配したが大丈夫だった。 美しい魚体を撮影したのち、急いで海へ戻した。
渋い割には、二時間で、 本命がコンタクトしたことに安堵した。 現在、プランクトンが元気よく発生中で、 今日は晴れていたので特に植物性プランクトンが優勢だった。
当然、動物性プランクトンも活性化する。 それを食べる為に、小魚や小イカなどが活性を上げる。 大抵は、上層あるいは海面近くに集まっている。
先ほどのマダイが、50巻きしたのに付いて来たのは、 そういう事情によるものである。
もう、これでいいかなと、帰港しようと思ったが、
このところ長く出会っていない大ダイをねらうことにした。 正午まで、まだ一時間半あった。
良型がコンタクトした辺りに船を戻し、
再び、同じコースを流してみた。 前回、前々回と、大マサが鈎掛かりして、 苦労の末、鈎とリーダーがブレイクした地点に差し掛かった。
すると、またもや、ギュイーーーン。があった。 ギュイーーーン。ギュイーーーン。ギュイーーーン。
あちゃ、また大マサかなと、苦笑い。
ところが、それほど大きくはないと気が付いた。 よし、これならば、玉網入れに持ち込めそうだ。
そう思いながら、慎重に指ブレーキを掛けながら、 やや強引にやり取りをしていった。 あまりブレーキを掛け過ぎると、鈎が伸される。
今年は、ヒラマサのコンタクトが妙に増えた為か、 1m以下であれば、獲れるという自信はある。 指ブレーキの加減が分かるようになったのだ。
海面に浮いても、その魚は、 しばしば抵抗して突っ込もうとしていた。 船底に入りそうにもなった。 そういう時は、竿をしっかり立てて、
竿のパワーで制止するようにする。 ひやひやしながらのやり取りもまた面白い。 時間は掛かったが、何とか無事に玉網に収まった。
体長81cm。細長い体型だった。
回遊性のヒラマサで、 このタイプは、ほとんど根に入らないので、 ブリのように、時間を掛ければ大抵は獲れる。
〆て、エラの血管を切り、水槽に浸けたまま、港へ向かった。 マダイよりずっと血液が多いヒラマサは、
血抜きがうまくいったかどうかで、冷凍保存後の旨さが変わる。 血液が残っていると、どうしても生臭くなる。 すぐさばくので、神経締めの必要はないが、
血抜きの処理だけは、手を抜けない。
今回は、ほぼ完璧だった。エラが白く変色し、 赤筋の部分も白くなっていた。
本日は、活性は低かったが、 本命の良型と、準本命のヒラマサの釣果音を、 たっぷり聴くことができ、いい釣行となった。
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