月16日

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風は弱まっていたが、
昨日までの時化で、波浪注意報が出ていた。
白波が立っていて、船もかなり揺れていた。

例によって港近くで、もう少し凪ぐのを待った。
魚探にはマダイの群れらしくものが多数映っていたが、
プレコンタクトすらなかった。

小一時間を費やしたが、他魚すらもアタらない。
海水を手で触れてみると、しっかり冷たかった。
本命や、準本命のヒラマサ以外の、
他魚からの魚信も無い日は、激シブである。

コンタクトは無くとも、
丹念にリトリーブを続けることが必要だ。
釣れない時間が多いほど、リトリーブは上手くなる。
鯛ラバには経験や技は不要だが、
エキスパート(熟練者)というのは存在する。
手にかかる微妙なタイラバの重量感のちがいから、
潮を読むことができるようになる。
僅かな潮の変化から、魚の活性を読み取るのである。
私も600回以上の出船経験からその重要性を学んだ。
釣三丸流の「潮読術」とでも言おうか、
これは、釣れない日の方が、よく磨かれる。

しばらくすると、風が更に収まり、
沖へ行くことが可能になった。
11日前に、激釣したポイントへ向かう。
これだけ間が空くと、
群れが移動している可能性の方が高いが、
満潮前の潮が動くチャンスに、
そのポイントを取り敢えずは狙ってみようというのである。
当てもなくポイントを巡るより、
前回よく釣れたポイントから始める方が、
効率が良いことが多い。

だが、そこでは、釣れなかったので、
更にポイントを沖にずらし、
かつての大ダイポイントを狙うと、
が、が、がつっ。とアタリがあったかと思うと、
ギュイーーーン。が出た。大ダイだったと思う。
よし!と小さく叫んで、やり取りに本腰を入れようと思ったら、
ふっと軽くなってしまった。単純な鈎外れ。
低活性の日ほど、このニアコンタクトが多い。

あーあ。と小さく落胆の声を上げたが、
それっきり。悔しさは微塵も残らなかった。
低温期にはよくあることである。

それ以降、また、ぱったりとアタリは止まり、
リトリーブの練習場となっていた。
潮読術を極めるには、釣れなくても、
退屈でも、淡々とハンドルを回し続けるのが肝心。

プレコンタクトが三度、ニアコンタクトが一度あった。
確かに、マダイの群れは居るのだが、
なかなか、捕食スイッチを入れてくれないようだ。

放浪流しさながらに船を流し、
いつの間にか、前回の激釣エリアまで流れ着いていた。
すると、まるでスルメイカのような鈍いアタリがあった。
そのまま巻き続けていると、またもやアタリ、
それが、三度続いた。五十巻きをした時だった。
ぐいん、と強いアタリに変化し、
ギュイーーーン。と釣果音が響いた。
強い音は、二度あった。
その後は、キュイーーン。に変わり、
魚が、良型のようなサイズであることを悟った。
中層からはほとんど引かなくなり、
「向こうでポッカリ」があった。



62cmのメスの良型マダイだった。
二度、三度、ヒラマサ並の引きがあったので、
内臓がはみ出していないかと心配したが大丈夫だった。
美しい魚体を撮影したのち、急いで海へ戻した。

渋い割には、二時間で、
本命がコンタクトしたことに安堵した。
現在、プランクトンが元気よく発生中で、
今日は晴れていたので特に植物性プランクトンが優勢だった。
当然、動物性プランクトンも活性化する。
それを食べる為に、小魚や小イカなどが活性を上げる。
大抵は、上層あるいは海面近くに集まっている。
先ほどのマダイが、50巻きしたのに付いて来たのは、
そういう事情によるものである。

もう、これでいいかなと、帰港しようと思ったが、
このところ長く出会っていない大ダイをねらうことにした。
正午まで、まだ一時間半あった。

良型がコンタクトした辺りに船を戻し、
再び、同じコースを流してみた。
前回、前々回と、大マサが鈎掛かりして、
苦労の末、鈎とリーダーがブレイクした地点に差し掛かった。

すると、またもや、ギュイーーーン。があった。
ギュイーーーン。ギュイーーーン。ギュイーーーン。
あちゃ、また大マサかなと、苦笑い。

ところが、それほど大きくはないと気が付いた。
よし、これならば、玉網入れに持ち込めそうだ。
そう思いながら、慎重に指ブレーキを掛けながら、
やや強引にやり取りをしていった。
あまりブレーキを掛け過ぎると、鈎が伸される。
今年は、ヒラマサのコンタクトが妙に増えた為か、
1m以下であれば、獲れるという自信はある。
指ブレーキの加減が分かるようになったのだ。

海面に浮いても、その魚は、
しばしば抵抗して突っ込もうとしていた。
船底に入りそうにもなった。
そういう時は、竿をしっかり立てて、
竿のパワーで制止するようにする。
ひやひやしながらのやり取りもまた面白い。
時間は掛かったが、何とか無事に玉網に収まった。



体長81cm。細長い体型だった。
回遊性のヒラマサで、
このタイプは、ほとんど根に入らないので、
ブリのように、時間を掛ければ大抵は獲れる。

〆て、エラの血管を切り、水槽に浸けたまま、港へ向かった。
マダイよりずっと血液が多いヒラマサは、
血抜きがうまくいったかどうかで、冷凍保存後の旨さが変わる。
血液が残っていると、どうしても生臭くなる。
すぐさばくので、神経締めの必要はないが、
血抜きの処理だけは、手を抜けない。

今回は、ほぼ完璧だった。エラが白く変色し、
赤筋の部分も白くなっていた。

本日は、活性は低かったが、
本命の良型と、準本命のヒラマサの釣果音を、
たっぷり聴くことができ、いい釣行となった。



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