いい凪だったが、それは朝の内。 昼前からは時化模様となるようなので、 早いうちに一尾釣り上げたいと考え、 比較的近場でリトリーブすることにした。 エソが多いのは覚悟の上。
満潮前の潮止まりが近づいていた。 船はいい具合に流れていた。 すると、静寂をかき消すかのように、 ガツッ!キュイーーン。といい釣果音が響いた。
キュイーーン。キュイーーン。 おおっ、これはでかい!と期待が高まった。
この二月は、時化が多く、 満足に出港できずにいた。
出港できたとしても、風が強く釣り辛かった。 一尾釣れば御の字という日ばかりであった。 こんなにも早い段階で掛かったのは、
厳寒期としては、たいへんラッキーだった。
引きは大ダイ並みだったが、 重量感は、それほどでもなかった。 ポンピングをほとんどせずに、
ごり巻きで上がってきた。
オスの良型だった。体長は62cm。 切り身にはもってこいのサイズだった。 丁寧に処理してクーラーへ保存。
これで、しばらくは、漁をせずに済みそうだ。
港で三枚におろし、 別荘で切り身を完成させる作業には、 合わせて二時間かかる。 もう戻ろうかと思ったが、
まだ実釣一時間も経っていない。 このまま放浪流しであと一時間続けることにした。
時刻は満潮の潮止まりとなり、
風が無いものだから、 船は、ほとんど動かず、バーチカル。 それでも、しばらくすると、 キュイーーン。が出た。
おおっ、二枚目の本命かという喜びも束の間。
60cmほどの巨エソが上がってきた。 がっくり。
また、しばらくすると、またしても釣果音が出た。 キュイーーン。キュイーーン。
今度こそ、本命か。と大いに喜んだ。 だが、またしても巨エソだった。 70cmもありそうだった。
仕掛けを失わなかったのは幸運だったが、 巨エソを二匹続けて見てしまうと、
やる気がみるみる無くなっていった。
エソの引きは独特なのでよく分かる。 鯛玉ごと失わないかと、 冷や冷やしながらのやり取りは、
心が疲労してしまうのだ。 潔く諦めて、港へ戻ることにした。
いつものように、船の上で、三枚におろした。 胃の中には、ウニの殻が溢れていた。
この時期のマダイは、ウニやカニをたらふく食べて、
まことに美味な肉質になっている。
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