午前中は、強風注意報が出ていた。 燃料補給にでも行って来るかと、 港へ向かうことにした。途中、ガソリンスタンドに寄る。
可能なら出船するつもりで、釣り具は車に積んだ。
港へ着くと、微妙な風具合。 釣り仲間は誰も出船していなかった。
切り身が僅かになっていたので、 できれば沖へ行きたかった。
北北西の風なので、港前はいいが、
少しでも沖へ出ると、強風が吹いて釣りにならない。 この時期、あちこち船を移動しなければ、 本命を手に入れることは難しい。
うーん、出るべきか出らざるべきか。 防波堤に上り、沖を見渡した。 白波が、小さいがあちこちに立っていた。 駄目元でもいいと、船を出すことにした。
四日間丸々時化ていたので、沖が恋しかった。
出港してみると、
案の定、沖は無理っぽかったので、 港周りでお茶を濁すことにした。 海は、濁すまでもなく、濁り潮だった。 プランクトンがかなり発生していた。
海水に手を浸けてみると、温かく感じた。 人の手の感覚などほとんど当てにならないが、 海水温の感触は、意外と役に立つ。
プランクトンが一斉に発生し、 活発な植物性プランクトンの光合成により、 酸素が発生する。
海中はプランクトンで満ち溢れていた。 まだまだ厳寒期の水温ではあるが、 いよいよ、春の到来である。
二度、ぐぐーっと来る魚信があったが、
鈎に乗ることはなかった。
港付近で一時間を費やした。 オキイトヨリが一尾掛かったのみだった。
わずかに風が弱まったので、
もう少し沖に出てみようと思った。 うねりを乗り越え、波をかき分けながら船は進む。 もうこれ以上は無理かなという所で停船した。
水深はさしてなかったが、 前々回、良型をコンタクトさせたポイントから流した。 同じ柳の下にドジョウは居なかったらしく、
しばらく、ノーコンタクトが続いていたが、 掛け上がりに差し掛かった時、 キュイーーン。といきなり糸が出て行った。
来たっ!と思ったが、フッと軽くなった。 回収すると、鈎が一本食い千切られていた。 巨エソに違いないと思った。
エソはマダイより寒さにやや弱く、
このところ、ぱったりとコンタクトが止まっていた。 エソが動くといくことは・・・。 ちょっと期待が高まった。
水深が、70mを越えたところで、
ぐいっ、ぐい、ぐいっと頭を振って、 鈎を外そうとしている魚を感じた。 そのまま巻き続けていると、 重々しさが加わり、釣果音が響いた。
キュイーーン。キュイーーン。キュイーーン。
おおっ、本命だ!と小さく叫んだ。 キュイーーン。キュイーーン。と、 更に数回、糸が出た。
慎重にリールを回した。 しばらくは、回収量と出て行く量が同じで、 よくもまあ、引くものだと感心していた。
無事、玉網に収まったのは、
オスの良型だった。
体長64cm。切り身には持って来いのマダイだった。 オスの良型は、もっとも歓迎すべき収獲である。
まだ二時間も経っていなかったが、
風が強くて、寒いの何のって。 足と手の指が痛いほどに冷たかった。 さばいて切り身にする作業も考えて、 この一尾で充分だと、帰港することにした。
前々回、前回は、長時間釣行を強いられたが、 今回は、散歩程度の釣行で済んだのは幸いだった。 ねらい通り、切り身サイズのナイスなオスを手に入れて、
いい気分のまま、港へ向かった。
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