2月4日

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ベタ凪に近かった。
曇り空だったが、南寄りの風で暖かい。
沖のポイントから攻めてみることにした。
わずかにうねりが残っていたが、
程良い揺れもまた気持ちがいい。
ゆりかごに居るような感じである。

船流速度は1.1kmと、
理想的ではなかったが、糸は少しインクライン。
70度くらいの角度を保っていた。
流れる方角が良かった。
しばしば大物がコンタクトするポイントへと流れていた。

むむっ、これは、何かが起こりそうだと感じていた。
大ダイ流れではないが、良型くらいはコンタクトしそうだ。
上げの潮が動き、船流速度が1.6kmにアップした。
すると、満を持していたかのように、・・・。

が、がっ、がつん。コンタクト!
キュイーーーーーン。
始めの走りは強烈だった。キュイーーーーン。
およよ。また、ヒラマサだろうか。
いや、そこまでは大きくない。
ヒラゴ程度だろうと思いながら、
やり取りに専念した。

魚種やサイズを想像しながらのやり取りは、
わくわくして、たいへん面白い。
鯛ラバの細仕掛けは、緊張感があっていい。

顔を見せてくれたのは、
美しい良型の本命だった。
60cmをわずかに超えるサイズ。



開始から三十分も経っていなかったのだが、
いい型の、マダイとのコンタクトは、
余裕が生まれ、その後の展開を楽にしてくれる。
ノルマを早々と達成したので、いつ納竿してもいい。
気楽な気持ちでリトリーブができるのだ。
本命をさっさと釣ってしまうのが理想ではあるが、
なかなか、どうして。そう、うまくはいかないのが釣りである。

一本の鈎が唇にガッチリ掛かっていて、
内側にぐにゃっと曲がっていた。
良型といえど、あれだけ強い引きをすれば、
さもありなむである。
幸い、貫通していたので抜けなかったのだ。
釣三丸釣法では、鈎も細いので、
ネットインするかしないかは、紙一重の差なのである。

時合いだと感じていた。
船を始動点に戻し、同じコースを通るように流した。
数々の実績を重ねてきたポイントへ向かって流れていた。
これで、食わぬはずはないなと思っていると、・・・。

ガツン!とひったくるようなアタリがあった。
ひと息にがぶ飲みされたような感触が手に伝わった。
ギュイーーーーーーーン。
今までになかったようなものすごい引きだった。
うわあっ、ヒラマサの大物だ!
当然、駄目だろうと直感した。
これほど糸を出されれば、瀬切れでプッチンとなるだろう。
これまでは、そういうことがよくあった。
とても太刀打ちできないような大物にかかると、
ひとたまりもない。

ところが、・・・。
あれっ?切れていないじゃあないか!

それからが大変だった。
巻いても巻いても上がって来ないのである。
上がって来ないどころか、
ますます糸が出されていく。

思い切って強く指ブレーキをかけ、
いちかばちかの勝負に出た。
そうしないことには、埒が明かないと思ったのだ。
ギュイーーーン。ギュイーーーン。
まさに、格闘といっていいくらいの奮戦だった。

腕がくたびれてしまい、
時々竿尻を腹に当てて、ポンピングを繰り返した。
こんなことは、滅多にない。
少しでも竿を上げることができたら、
すかさずその分を巻き取る。
糸が出そうになるぎりぎりまで指ブレーキをかけ、
走ろうとするヒラマサの勢いを止める。
竿を左右に振って、走る方向をはぐらかす方法も試みた。

無我夢中とは、こういうことをいうのだろう。

善戦の甲斐あって、ヒラマサは徐々に上がってきた。
しかし、油断は禁物。
玉網に入るまでは、一瞬たりとも気が抜けない。

姿が見えた。
で、でかい!と思わず叫んでしまった。
気合を入れて 右手に玉網を持ち、ざばっと掬った。
ふーっと、安堵のため息とともに、
デッキに座り込んだ。



どのくらいの時間が掛かったかは覚えていない。
普通なら、時計を見るのだが、
そんな余裕など、あろうはずがなかった。

それもそのはず。体長101cm。
初のメーター級のヒラマサ。
釣三丸新記録の更新である。
しばし、その大きさに見とれていた。

時刻はまだ午前10時にもなっていなかったが、
これで納竿することにした。
めいっぱいやり取りし、大物をネットインさせた後は、
幸福感に浸りながら帰港するのがいい。
解体作業も待っているし・・・。

それにしても、よくリーダーが切れなかったものだ。
鈎は二本とも口の中にがっちり掛かっていたが、
一本は、真ん中から、ポッキリと折れていた。
まさしく、薄氷を踏むような勝負だったのである。

仕掛けは、いつもと同じ。
国産PE0.8号ラインに4号ナイロンリーダー6m。
鈎はチヌ鈎の5号。
そして、タイラバは、釣三丸スタンダードであった。



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