1月4日以来の出港だった。 13日間以上もあいてしまうのは、昨年10月以来。 海が恋しくなっていた。
うねりは残っていたが、冬凪。 PM2.5の飛来がなく、 遠景の島が美しく見えた。 これほど空気が澄んでいると、
クルージングだけでも楽しい。
今日は切り身枯渇に備えての漁。 良型以上のオス一尾でOK。
空気と同じく、海もすっかり澄んでいた。 しかも、微風の為か船の流れが悪い。 時々1.0kmを表示するも、 0.0kmがしばしばだった。
愛艇のGPSは精度が低いので当てにならない。 おそらく、赤ん坊のはいはい程度だっただろう。
水温を手で確かめてみると、 しっかり下がっているのが分かった。
水温が低下したばかりで、澄み潮。 しかも、船が流れないという、 不活性要因が見事に揃ってしまった。
しかし、始め内のみ、三度アタリがあった。
が、どれも普通に鈎外れ。 一度は、上層近くまで浮かせたのちのフックアウト。 活性が低いと、鈎掛かりがどうしても甘くなる。
結局5時間以上ランガンを重ねた。 二度、ガツンと、いいアタリがあったのだが、 鈎に乗ることはなく、鯛玉のホロに歯形を確認した。
巨エソ地帯でもエソは来なかった。 それはそれで、うれしいのだが、 なんと、他魚すら一匹も釣れていなかったのである。
このままでは、釣三丸始まって以来の、 完全ボウズとなる。 それはそれで貴重なデータとなるだろう。 631回の出船にして、初。
状況が厳しければ、仕方ない話である。
切り身の心配もあった。 根魚や青物の切り身がほどほどに残っているので、
今日どうしても釣る必要はないのだが、 あったかい料理をするなら、 やはり旨味たっぷりのマダイが最高なのだ。
後のことを考えて、
午後2時ジャストで納竿するつもりだった。
港近くまで船を戻し、 午後1時45分に最終流しをした。 残り、15分。
船は相変わらず流れず、無風に近かった。 ラインはバーチカル。 釣れるはずのない惨めな条件だった。 完全に諦めていた。
午後1時58分。納竿まであと二分に迫った。 最後のフォールをしようと、仕掛けを回収した。 やっぱり駄目だったか。 イトヨリダイのポイントだったので、
それくらいはと思っていたのだが、・・・。
と、突然のことだった。 がつ、がつっ、ぐいん。 キュイーーン。キュイーーン。
えっ、えっ、もしかしてヒット? 思わず頬をつねろうとしたが、 あいにく両手がふさがっていた。
今日は三度も鈎外れの目に会っている。
バレない為の、基本的なやり取りを忠実に行った。 とにかく、手を止めずに巻き続ける。 糸が出ていても構わずハンドルを回す。
竿を海面に対して並行にし、 曲がりが90度を保つようにする。
徐々に浮かび上がっていた。 もう、大丈夫だろうと、
重さを感じるのみのやり取りとなった。
なんとか、バレずに玉網に収まった。 ふーっと、安堵の胸を撫で下ろした。
これほど緊張感のある本命とのやり取りも珍しい。
61cmの美しいオスの良型だった。 時刻は午後2時3分を示していた。
実は、これ、船長にとって、 今年初めての本命なのである。 元旦からの4日間は、 本命は全てゲストに持って行かれ、 船長は、本命ボウズが続いていたのだ。
今日こそは、・・・。と思っていた。
こんなドラマもあるんだなと、 ひとり、感心しきりだった。 50回に一度あるかないかの、
見事な演出をしていただいた、 海の神に感謝しつつ、港へと戻った。
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