マダイのリリース

もったいない。
漁協に持っていって売ればいい。と、
釣り仲間たちから言われる。
どうやら、たくさんの魚をリリースしているのは、
私だけらしい。
それでも、私は、リリースしようと思っている。
マダイがいちばんのターゲットなので、
マダイについては、特に厳しい制限を自らに課している。
まずは、50cm未満はリリース。
50cm以上のマダイは、
オスメスの判断がつきやすいので、
メスならばリリース。
春に卵をたくさん産んでもらって、
子孫を残してほしい。

したがって、マダイをキープするのは、
50cm以上のオスということになる。
これって、釣れる量全体からみると、
かなり少ないと思う。
島でタイラバをやっていると、
たくさんのマダイが釣れるので、
漁獲制限をしたとしても、
私一人が食べるくらいは十分にキープできる。
風の弱い日はほとんど出港し、
多くのマダイを釣り上げているのだから・・・。

仲間たちはみんな、
ここの海は豊かだから大丈夫だと考えているようだ。
しかし、たとえば、大型のマダイだったら、
春には200〜400万の卵を産む。
ほとんどが他の魚などの餌となって、
生き残るのは百万分の一というわずかな数に過ぎないが、
計算上は2匹〜4匹が生き残って、
一匹のメスが毎年卵を産むので、
10年間で20〜40匹のマダイが新しく
島の海に泳ぐことになるだろう。
キープしたら、残る子孫は、0匹。
40か、0か。
この違いは、たいへん大きいと思う。

乗っ込みといって、
マダイは春になると
浅瀬の岩礁地帯に集団移動して
時期をずらしながら一斉に産卵をする。
産卵のエネルギーを蓄えるために餌をよく食べる。
したがって、乗っ込みの時期は警戒心も薄れて、
マダイがよく釣れるだ。
よく釣れるからといって、
無制限に釣れるだけ釣るというのは、
結局資源の枯渇を招き、
釣り人が自分の首を自分でしめることになる。
「この頃は、とんと釣れなくなったな。」と思うようになるだろう。
実際、日本各地は、そういうところが多い。
少なくとも乗っ込みの時期くらいは、
メスは放流すべきである。

私はこの島がたいへん気に入っている。
フレンドリーでやさしい島の人々がいて、
ほぼ一年を通して、
十中八九は良型のマダイが釣れる。
釣れない日は、五回に一度もない。
マダイの豊富な島なのだ。

そのマダイが釣れなくなったら、
ここにいる意味が無くなってしまう。
そうなれば、残念ながら撤退だ。
私一人でも漁業制限を自らに課しているのは、
そういう理由から。

少なくとも、私が島に来たために、
マダイが釣れなくなったと言われたくない。
ということもあるが、
何より、必要最低限のキープで、
島の自然を保持したいという願いがあるのだ。



上の画像は、
リリースしたばかりのマダイだ。
なんと美しい魚体なのだろうかと思う。
まさに、海の宝石である。



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