小漁師
一般的には、船に乗って漁をし、
魚介類を売った金銭で生活するのが漁師だが、 小漁師は、趣味とわずかな実益を兼ね、 金銭にはこだわりを持たない。
愉しみでやっているので、 漁獲量を問う必要もなく、最小限の魚を獲ればいい。 そして、何より退職してのちの人生を充実させようと思う。
人によっては、スポーツであったり、 山村暮らしや旅行であったり、農耕であったりと多種多様で、 私の場合は、現役の頃から余暇にやっていた釣りを
思う存分やりたいと願っていたことから、 現在の小漁師生活を選んだ。
最初から小漁師であった訳ではない。
少なくとも三年間は、釣り師(アングラー)だった。 大ダイを釣り上げることを一番の目的とし、 その為の実釣研究を重ねて行った。
タックルや仕掛けは元より、 潮や風などの自然条件による釣果の目まぐるしい変化を学習しながら、 よく釣れるポイントの開発に勤(いそ)しんだ。
五年目前後で、それらの研究が終了したと思うようになった頃に、 小漁師になったという実感が湧いてきた。 つまり、五年の歳月を経て、ようやく、
島の他の小漁師の皆さんと肩を並べられるようになったのだと思う。
未だ、船の管理には冷や汗をかくことも多いのだが、
数々の苦い体験を積んでいるうちに、 動揺することもあまりなくなった。
フレンドリーで優しい島の人々に恵まれて、
小漁師生活も安定期に入ったような気がしている。
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