実釣研究700回


思えば、よくぞ出港を重ねたものだと、
我ながら感心している。
4年と10か月で、出船回数は700を超えた。

ここまで続けて来られたのは、
何んといっても、
島の人々の優しさが支えになったということ。
それがなければ、独居生活をしながらの、
鯛ラバ実釣研究を愉しく続けることはできなかっただろう。
感謝してもし尽くせないくらい程。

先日、島出身の若者をゲストに迎え、
鯛ラバを楽しんだのだが、
その時に、70cmというエソの釣三丸新記録を作った。
若者も初めて見たというような大きさで、
彼の祖母が、エソ天を作るので持ち帰りたいと言う。
そして、作ったら持ってきますよと言ってくれた。

エソ天が旨いことは知っていたが、
あの地球外生命体のような魚を、
自らのクーラーに入れるのはどうにもためらわれ、
いつもは、マダイの好きなカニの餌になるだろうと、
〆て放流するのが常だった。

その日の夕方、エソ天が届いた。
2、3個でいいよと言っていたのだが、
パックには10個入っていた。
全部で20個作ったそうだが、半分を頂けたのだ。
恐縮するとともに、この心遣いに痛み入った。
味は、聞きしに勝るものだった。

このエピソードでお分かりいただけたと思うが、
島の人は、とにかく、優しいのである。
この島に来るまでは、都会に居たせいか、
人の優しさというものにはほとんど触れて来なかったのだが、
島に住むようになって、多くの人から、
気を遣ってもらい、多くの優しさを頂いた。
古き良き時代の日本が、この島には残っている。

さて、釣行に戻ろう。
100回ほどは、訳が分からなかった。

200回でもまるで、分からない。
暗中模索の五里霧中。

300回になると、ようやく、鯛ラバというものが見えて来たが、
まだまだ試行錯誤が続いていた。
仕掛けもあれこれといじっては、色々と試していた。

400回でも、同じような試行錯誤が続いていたが、
次第に、操船の面白さを感じるようになった。

500回になると、釣三丸スタンダードという、
不変のタイラバが完成し、
道具や仕掛けの試行錯誤は、皆無となった。
季節や条件を問わず、これを使い続けるようになった。

すると、仕掛けが、漁具となり、
道具や仕掛けの不具合で、大物を逃すことは無くなった。
そして、安心して、操船にのみ集中できるようになった。
ゲストが違ったタイラバを使うこともあるが、
たとえ、それでいい釣果を挙げたとしても、
では次回をそれを使ってみようなどとは思わない。
それだけ、実績には自信があるということだ。

600回を超える辺りから、
釣果は、一にも二にも、自然条件に拠ることを理解した。
船が流れていなければ釣れないので、
流れているポイントを探してあちこち移動する。
そうしている内に、何とか船の動くポイントを見つけ、
本命を釣り上げるようになる。
それでも、年に数回は、超低条件の日もあることも知った。
本命ボウズの日は、思ったより多い。

700回を数えた現在。
実釣研究は終了したと思っている。
つまり、今後、とりわけて目新しい研究成果を、
報告することはないだろう。

では、鯛ラバという釣りが面白く無くなったかと言えば、
まったく、そんなことはない。
たとえば、低条件で激シブな日に、
時間を掛けて、釣り上げる本命一尾が、
とりわけ面白いと思うようになった。

自然条件は、毎日、必ず違う。
船の流れも、潮の動きも、まるで違う。
それでいて、本命のコンタクトポイントは、
ほぼ一定なのである。
こんなところで釣れるのかということは無くなったが、
釣れ方や、釣れる魚の大きさや種類、
本命のコンタクトパターンは毎日違っているのである。
海は、変化の宝庫で、
飽きるということとは、まったく無縁である。

これから、さらに、
じっくりと、島の海を愉しんでいけそうな気がしている。



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