シェアリズム

日銀はついに、
2%インフレターゲットは諦めたようだ。
私は、当初から、
無理なことは判っていたので、
ああ、やっぱりなと思った。

ずっと前のバブル期から失われた10年を経て、
未だ、デフレマインドは続いているし、
これからも続くだろう。

一部、高くても良い物をという、
高額な消費志向はあるものの、
より安いものを求める消費者は圧倒的に多い。

格差が広がるとともに、
財布のひもを締めざるを得ない人々が増加してしまった。
節約志向が強まり、
無駄なものは買わないといった、
商品の厳選も進んだ。

流行を追う人は相変わらず少なくはないが、
それに費やす金額は多くはない。
ものが壊れたら修理して使うし、
要らなくなったものはネットオークションで売る。

実は、このような、
GDPには表れない経済行動は、
日本人気質に合っているのだ。

私ども日本人は、
もともと質素倹約が好きであることを高度成長期に忘れ、
バブルの崩壊から
今日に至るまでの長い年月をかけて、
じわじわと思い出したのではないか。

あっ、そうだ。
俺たちには贅沢は似合わないと我に返った。

「おもてなし」というサービスも、
実は、相手に幸福感をシェアしている。
金銭的な利益を超越したもので、
シェアする側もされる側もお互いが笑顔になる。
日本人は、お金以上の価値を、
この気遣いのシェアというやり方で相手に与える。
そういうことが得意なのである。

分かち合うという意味の「シェア」という言葉は、
これからの世界の思想を変えて行くほど
大きなものになっているらしい。

なんでも、資本主義に代わるものが、
「共有主義」とかなんとか言われているようだ。
シェアリズムとでも言おうか。

例えば、このネット上の情報だって、
シェアリズムのひとつで、
無料で得ることができる。

私もとっておきの釣りの情報を、
ネットでシェアしているし、
ゲストを乗せて釣りの愉しさをシェアし、
釣った魚を友人たちにシェアしている。

困っている人を助けている訳ではないので、
ボランティアとはちがう。
日本では、募金やボランティアは、
まるで義務のようになっている感じがしないでもない。
シェアは、義務ではないから愉しいのだ。

シェアリズムが進行すると、
物が売れなくなるのでデフレはさらに進む。
と同時に格差社会が解消の方向へ向かう可能性もある。

ただ、個人の知恵や工夫は要る。
得意分野の能力を高め、
シェアするほどに価値あるものにしなければならない。

かつてニュージーランドで、
ホームステイさせてもらったある家族は、
親戚の家を休日にみんなで集まって建てていた。
一軒建てたら、
次の親戚のマイホームを作る手助けに行く。
やがて、家づくりの、
それぞれの専門分野が得意になったりもする。
人生で最も高価な買い物を
シェアリズムで済ませていた。

シェアリズムは、人と人とを結び付け、
競争ではなく分かち合うことによって、
それぞれが幸せになれるのである。

キャピタリズム(資本主義)から、
シェアリズム(共有主義)へ、
私どもは、今、歴史の、
大きな転換点に居るような気がしてならない。



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