マダイの匂い

本命を一尾。というのを課題にして出船を続けてきた。
早、三年と五か月が経ち、
前回(2015年12月9日)で462回目の出船となった。
とりあえず、1000回を目途にしているが、
もうすでに半分近くになったのには我ながら驚いている。

回数を重ねる毎に、
「マダイの匂い」に対する臭覚が鋭くなっていく。

鯛ラバは、「静かな釣り」である。
風と潮にまかせて船を流し、
淡々とリールを回すだけ。
静かだから、マダイの気配を感じ取ることができる。
わずかな潮の変化もわかる。
魚がタイラバにちょっかいを出すと、
そのサイズや種類によってちがった反応が表れる。
活性の高さも読み取ることができる。
鯛ラバのリトリーブは、
まるで、魚信センサーのごとくに、
釣り人に海の中の状況を伝えてくる。

マダイは、本命になると単独行動をしながら、
餌を求めてあちこち動き回っている。
通り道や、集まりやすいところもあるが、
島の海では、かなり広範囲に散在している。
早い時間に本命一尾を確保すると、
しばしば、実績の無いエリアを、
あてもなくドテラ流しをすることがある。
と、思ってもみなかったポイントでヒットするから面白い。

そんな場合、潮の動きに変化が生じている。
バーチカルだったフォールが、少しだけ斜めになったり、
鯛玉の重量感が変わったり。
魚は、潮の変化に敏感なのだ。
満潮、干潮の前後は、
特に潮流の変化が大きいので、
「大ダイ流れ」が起こって、大物のチャンスが到来する。

いまだボウズのゲストがいて、
どうしても釣らせてあげたいと思う。
そういう時は、やはり、実績のあるポイントを流す。
潮が海底の瀬にぶつかり、
プランクトンやベイトが湧き上がるところや、
魚道に沿っていて、マダイが集まりやすい瀬際などである。
いいポイントで、いい潮の変化があれば、
十中八九、本命がタイラバを咥える。

難しいのは、潮と風の向きや強さで、
流すポイントを変える必要があるということ。
同じ場所でも、流れる方向によって、
ヒットしたり、しなかったり。
そいうことも、様々な条件下で数多くの経験を踏まないと、
分からなかったことである。

出船100回目くらいまでは、暗中模索。
200回では、まだまだ曖昧模糊。
300回で、何となくつかめたというレベル。
400回を過ぎる頃、ようやく、
だいたいこんなものだろうと思えるようになった。

鯛ラバという釣りそのものは、
ビギナーズラックは珍しくないくらい、
経験や技は要らない簡単な釣りなのだが、
いつ、どこを、どのように流すかという、
船長サイドの操船に限っては、奥が深いようだ。

出船可能かどうかは港へ行ってみないと
分からないことと同じように、
今、釣れそうかどうかは、最終的には
その時に鯛ラバをしていないと分からない。
操船している者にとって、
タイラバのリトリーブは、まことに優れた、
マダイの(匂い)センサーでもある。



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