長期離脱

島に借りている住居は、
釣りをするだけの為に特化している。
時化が続こうものなら、居ても仕方がないので、
自宅へ戻るというのが現在のライフスタイルである。

目安は五日。
四日までなら、何とか我慢ができるが、
五日となると、いささかうんざりする。
今年の冬は特にタイラバ戦線離脱が長く続いている。

別荘と自宅を往復するという経験を重ねている内に、
予報天気図の等圧線間隔から判断して、
うーん、こりゃ五日以上は時化そうだなと予想するのだが、
それが、ほとんど当たるようになった。

島ではひとり暮らしなので、
当然のごとくに家事と住居のメンテナンスは、
すべて一人でやらざるを得ない。
家一軒分の家事は、結構たいへんなのだが、
ここで、主夫としての業を磨けることになる。

家事の基本は、思い立ったらすぐに動くこと。
あとでやろうなどど考えないことだ。
考える前に体が動いているというふうになれば、
面倒くささなど感じなくなる。
さくさく動けば、軽運動をしていることと同じになり、
とりわけて運動する必要は無くなる。

洗濯機も掃除機も無く、
井戸水を使っていた頃の主婦には、
たとえ時間があったにしても、
ウォーキングやジョギングは必要なかったのは、
家事労働によって、
十分過ぎるほどの運動をしていたからだろう。
カロリーの摂り過ぎよりも、
運動不足が成人病の原因と考えた方が当たっている。

家事をうまくこなすには知恵が必要だ。
人の脳では、知識と経験が蓄積され、
その相互作用によって、勘が働き、
知恵が生まれるのだが、
知恵は、実生活上の現実的な場面でのみ働く。
また、知恵は、失敗を多く重ねることで、確実性を増す。
「やってみなけりゃ、わからない。」なのであるから。
これは、「タイラバ学」と同じこと。

別荘は、築六十年という古民家であることは、
以前にも何度かお伝えした。
少しでも油断しようものなら、住むに耐えなくなる。
ホコリと虫。食材の腐食にカビ。

例えば床。
一昨年の夏に一週間別荘を空けたところ、
戻ってみると、木製フロアにびっしりとカビが生えていた。
あわてて拭き取って、
防カビフローリングワックスをかけたのを覚えている。
それ以来、定期的にワックスを施している。

冬なら大丈夫かなとその作業をしばらく怠っていたら、
先日戻った時に、冷蔵庫の前に少領域ながら、カビを発見した。
寒さに強いカビもあるから油断ならない。

ホコリ、ダニ、カビの胞子を掃除機で吸い取る。
それは頻繁にやらないと、カビの発生を助長する。
ダニはダストアレルギー源でもあり、
様々な微細な虫たちの餌でもある。
その虫を食べに、あの恐ろしい百足がやって来る。

掃除機のみでは不安なので、
空気清浄機を終日作動させている。
匂いにも反応して、
突然ターボがかかって驚いたりもしているが、
それだけに、頼もしい製品ではある。

別荘を空ける間隔が二週間ともなると、
心配事は確実に増える。
野菜果物は食べられなくなっているだろう。
ジュースの類もすべて廃棄せねばなるまい。
流行のノロウイルスは二月が最盛期なのだ。

長期離脱を終えられそうな気象状況となると、
凪が戻ってくるという安堵と喜びがある反面、
家事の増大という問題を抱えることになる。

ゴミ、ホコリ、チリ。
家具という家具にはうっすらと溜まっているに違いない。
戻ったら、まずは大掃除だな。
拭き掃除をして、ワックスもかける必要があるだろう。
それから、穴を掘って廃棄食材を埋めなくっちゃ。
トイレ掃除に、風呂掃除もあるな。
などと、あまたの家事への思いをめぐらせながら、
島への道のりを進むことになる。



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