低活性の日の憂鬱(ゆううつ)
凪の日はうれしいが、凪過ぎると、まずい。
釣果音を聴くことが極めて難しくなるからだ。 澄み潮で、潮が小さいなどという条件が重なると、 本命ボウズの憂き目を見ることも多い。
船流速度は、ほとんど0.0km。 それでは、まず釣れないので、 どこかに船が流れるところはないかと、 ランガンを重ねる。
まるで湖面のような海を見ていると、 すべての魚がじーっと大人しくしているように感じる。
釣行時間が長くなる。 延長、再延長を重ね、
高活性の日の二倍、三倍になることもある。 リールを持つ左手の腱鞘炎が痛む。
釣果音依存症という稀に見る病気の為、 船を出したからには、
何としても一度はその音を聴きたいと思う。 その為だけに研鑚を積んできた。
鯛ラバは単調な釣りだけに、
魚からの反応が無いと、退屈極まりない。 ただ淡々とリールを回しているというのは、 まさに、無為徒労。
資源がまだまだ豊かな島の海でも、
釣れぬ条件がすべて重なると、ほんとうに釣れない。 こんな時でも釣れるのは、きまってカナトフグやエソ。 空しさが倍増してしまう。
無釣果音の日。 こういう日があるから、いい釣果の日はうれしいのだ。 そう自らに言い聞かせることで精いっぱい心を落ち着かせる。
ただ、ひとつだけいいことがある。 その日の夜。 まるで、遊び疲れた子どものように、 ぐっすりと、眠る。
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